| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) C02-08  (Oral presentation)

四万十川流域におけるテナガエビ類2種の個体数変動と保全管理
Temporal patterns in the abundance of two freshwater prawns of the genus Macrobrachium in the Shimanto river basin, and conservation management

*Shingo YAMASHITA(Sakanayama Lab.)

 テナガエビ類は,四万十川流域では「川エビ」と呼ばれ,川で泳ぐ子ども達の遊び相手であり,川とともに暮らす生業の糧であり,川エビとキュウリの煮物のような独自食文化にもなるなど,重要な地域資源となっている。ところが近年,その現存量が急激に減少しはじめた。
 四万十川流域には,ヒラテテナガエビ,ミナミテナガエビ,テナガエビの3種が生息しており,うち前2種が通し回遊性で,かつ主な漁獲対象ともなっている。そこで,本研究では,テナガエビ類2種の季節/年変動を把握し,保全対策を検討することを目的として,漁獲量等のヒアリング調査や,複数定点における長期定量モニタリング調査を実施した。モニタリングは,2012年から2018年まで毎月,小型定置網を用いた定量採捕をおこない,種別個体数や湿重量,体サイズ,抱卵状態等について記録したのち,その場で再放流した。 
 ヒアリング調査の結果,中下流域から漁獲物が集まる漁協の川エビ取扱量は,2009年の約2.5tをピークに,2.0t,1.0t,0.7t,0.6t,0.15tと連続的に減少が続き,2017年には0.26tとわずかに上昇したものの,2018年には0.05tと再び落ち込んだことがわかった。近隣河川から持ち込まれる市場でも同様の減少傾向を示しており,卸売単価が上昇するなどの変動がみられた。
 モニタリング調査の結果,本流と支流では種組成が異なること,ヒラテテナガエビのほうが出現時期が早いこと,抱卵個体は5-9月に出現すること,8-9月に稚エビ遡上個体数が多いこと,現存量は開始年以降も継続的に減少しており,地点によっては2018年が最低値となること等が明らかとなった。
 高知県では,県レッドデータ2018にテナガエビ類3種が準絶滅危惧種として選定されたほか,2018年9月からまず7ヶ月間の漁獲規制が開始された。今後も要経過観察である。これまでの成果を整理して報告する。


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