| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) K02-03  (Oral presentation)

アカマツ広域産地試験の岡山および高知における苗畑での2年生苗の成長特性
Growth characteristics of Pinus densiflora second-year seedlings in the provenance trial in the nurseries at Okayama and Kochi, Japan

*岩泉正和(森林総研林育セ関西), 今野敏彦(森林総研林育セ関西), 飯田啓達(森林総研林育セ関西), 河合慶恵(森林総研林育セ関西), 三浦真弘(森林総研林育セ関西), 那須仁弥(森林総研林育セ東北), 磯田圭哉(森林総研林育セ)
*Masakazu G. IWAIZUMI(FTBC Kansai, FFPRI), Toshihiko Konno(FTBC Kansai, FFPRI), Yoshitatsu Iida(FTBC Kansai, FFPRI), Yoshie Kawai-Munehara(FTBC Kansai, FFPRI), Masahiro Miura(FTBC Kansai, FFPRI), Jin'ya Nasu(FTBC Tohoku, FFPRI), Keiya Isoda(FTBC, FFPRI)

アカマツは本州・四国・九州に分布する日本の主要針葉樹の一つであるが、近年マツ材線虫病被害の拡大により天然資源が減少し、遺伝的多様性の喪失が危惧されている。本種の生息域外保存を検討する上では、保存先の環境に対する応答性の変異について理解することが不可欠である。しかしながら、これまで日本の樹木については、国内分布域を網羅した体系的な環境適応性の評価は殆ど行われていない。こうしたことから、林木育種センターではアカマツの広域産地試験に着手し、これまでに実生の発芽時期や冬芽形成等の地理的変異が認められている(岩泉ら 2018:前回大会)。本研究では、複数箇所の苗畑(岡山県勝央町及び高知県香美市)において生育中の2年生実生家系の伸長成長量・伸長時期について調査し、その産地間差や地理的傾向、試験地間での傾向の違い等について解析した。
試験は、甲地(青森県)から霧島(宮崎県)にわたる全国11箇所の有名アカマツ天然林内の各5母樹から採種した55家系の実生後代を対象に行った。勝央試験地では2013年、香美試験地では2017年に播種し、翌冬家系あたり24個体(12個体×2反復)を床替えし、伸長開始した2014年4月(勝央)および2018年3月(香美)からそれぞれ12月まで、毎月中旬に生育個体の苗高を測定した。
その結果、実生家系の苗高及び年間伸長率(12月苗高/期首苗高)は明瞭な地理的傾向は見られなかった。一方で、月別積算伸長割合(当該月までの積算伸長量/年間伸長量)は、いずれの試験地においても成長期間前期(4-7月)において原産地の緯度・経度と有意な正の相関が認められ、東北日本の家系ほど全体的に伸長時期が早かった。また、家系毎の苗高や上記の伸長の早遅は2試験地間で有意な正の相関が観察された。このことから実生の成長時期には地理的変異が存在し、それは異なる環境下でも共通する可能性が考えられた。


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