| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) L01-08  (Oral presentation)

青森県陸奥湾でのカマイルカLagenorhynchus obliquidensの摂餌行動の観察
Field Observations on feeding behavior of Pacific white-sided dolphins Lagenorhynchus obliquidens in Mutsu Bay,Aomori

*五十嵐健志(むつ市海と森体験館), 森阪匡通(三重大学), 森川穂乃佳(近畿大学), 久保真司(浅虫水族館), 三谷曜子(北海道大学)
*Takeshi IGARASHI(Mutsu City Nature Center), Tadamichi Morisaka(Mie Univ.), Honoka Morikawa(kindai Univ.), Shinji Kubo(Asamushi Aqua.), Yoko Mitani(Hokkaido Univ.)

 群れで回遊するカマイルカLagenorhynchus obliquidens は、毎年5~6月に陸奥湾に来遊し、採餌行動を行う。本研究では,湾口部に近いむつ市脇野沢の鯛島周辺海域で、2018年5月12日〜6月16日に、船上からの目視、ドローンDJI Phantom4Pro、GoPro5等を用い採餌行動の観察を行った。魚種は目視、画像記録、漁業者や遊漁者の情報から同定した。
 5月上旬〜下旬に同海域で多く見られた体長約20cmのマイワシを捕食する際、マイワシの魚群は海面近くで塊状となり同じ所に一定時間留まるため、イルカは魚群の周りをゆっくりと泳いだ後、数個体が同時にスピードを上げ魚群に突進し、8の字を描くようにUターンしては捕食を繰り返した。この時のイルカの頭数は魚群数や滞留時間などによって増減し、5~100頭程の群れによる捕食が同海域でみられた。なお、この時にできる鳥山はカモメ類が多かった。
 5月下旬〜6月中旬に同海域で多く見られた体長20cm前後のサバ類は、魚群の形を自在に変えながらマイワシより深所を移動していた。8頭前後のイルカの群れの場合、海面近くに追い込まれた魚群を囲むように水面を泳ぎ徐々に輪を狭め、魚群が塊状になり下に向かうと潜っていき、高速で小さな円を描くように泳ぎながら魚群の上下左右から捕食している様子であった。親子と思われる2組を含む5頭の群れの場合、水面近くの魚群の外周を、子を除く2,3頭が方向を違えて高速で泳ぎ、魚を挟み撃ちするように交差し水面上にジャンプする行動がみられた。サバ魚群の頻繁な移動に伴い、イルカも移動し捕食を繰り返した。この時の鳥山は潜水性の海鳥(ウトウ,ウ類)が多かった。
 このようにカマイルカは、体長や体形が類似し群れをつくる魚種を餌とし、その捕食行動は複数個体が共同で行い、魚種により異なっていた。また、この時にみられる鳥山も異なっていた。


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