| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) L01-09  (Oral presentation)

衛星標識データから見た南氷洋におけるクロミンククジラと海氷との関係
Movements of satellite-tracked Antarctic minke whales and their association with pack ice

*小西健志(一財 日本鯨類研究所), 磯田辰也(一財 日本鯨類研究所), 坂東武治(一財 日本鯨類研究所), Lars Kleivane(Restech Norway), 南川真吾(水産研究・教育機構)
*Kenji KONISHI(Inst. Cetacean Res.), Tatsuya Isoda(Inst. Cetacean Res.), Takeharu Bando(Inst. Cetacean Res.), Lars Kleivane(Restech Norway), Shingo Minamikawa(Fish. Res. Edu. Agcy.)

クロミンククジラBalaenoptera bonaerensisは、ナガスクジラ科鯨類の一種で、夏期に南極海へ索餌回遊を行い、主にナンキョクオキアミを捕食する。また、本種の個体数は50万頭程と推定されており、南極生態系において重要な捕食者として知られている。さらに、本種は密集した海氷域に分布するため、将来的な地球温暖化や生態系の変化の影響を調べる上で、本種と海氷との関係を調べることは非常に重要である。 本研究では、南極海鯨類科学調査(NEWREP-A)の中で、クロミンククジラにARGOS衛星を利用した標識を装着し、長期間の追跡を行った。標識の装着は、2016および2017年の1、2月に南緯65度付近、東経60-140度の海域で行われた。船舶から標識銃にて計6個体に装着し、位置情報を回収した。得られたデータは、遊泳速度や進路方向を利用したBayesian hierarchical switching state-space modelにあてはめ、6時間ごとの位置を推定すると共に、位置ごとに行動の区分(移動・餌の探索)を行った。また、クジラの移動経路は、海底地形、衛星画像を用いた海氷密度、クロロフィル濃度および水温と重ね合わせ、本種の行動と海洋物理環境との関係を調べた。また、この検証にはGeneralized Additive Modelを用いた。 本研究の結果、クロミンククジラは、先ず南側の氷縁に移動し、海氷に囲まれたポケット状の海域(海氷ギャップ)に入り、その中で暫く餌の探索行動を行っていた。また、近くに海氷ギャップが存在しない場合は、氷縁に沿って大きく移動を行い、ギャップを探索する行動が見られた。一方で、表層水温やクロロフィル量など他の物理的環境との関連はあまりなく、本種の分布や移動は、氷縁の形状や密度に最も影響を受ける事が明らかとなった。


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