| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) L01-10  (Oral presentation)

採餌海域におけるシロナガスクジラの唸り 【B】
Growl of blue whales in the foraging ground 【B】

*岩田高志(東京大学大気海洋研), 赤松友成(水研機構中央水研), Marianne Helene Rasmussen(Univ. Iceland's Res. Centre), Joseph Schnitzler(ITAW, Univ. Vet. Med. Hannover), 青木かがり(東京大学大気海洋研), 佐藤克文(東京大学大気海洋研), Johannes Baltzer(ITAW, Univ. Vet. Med. Hannover), Magnus Wahlberg(Univ. Southern Denmark), Ursula Siebert(ITAW, Univ. Vet. Med. Hannover)
*Takashi IWATA(AORI, University of Tokyo), Tomonari Akamatsu(NRIFS, FRA), Marianne Helene Rasmussen(Univ. Iceland's Res. Centre), Joseph Schnitzler(ITAW, Univ. Vet. Med. Hannover), Kagari Aoki(AORI, University of Tokyo), Katsufumi Sato(AORI, University of Tokyo), Johannes Baltzer(ITAW, Univ. Vet. Med. Hannover), Magnus Wahlberg(Univ. Southern Denmark), Ursula Siebert(ITAW, Univ. Vet. Med. Hannover)

 地球上最大の動物であるシロナガスクジラを含むヒゲクジラ類は、繁殖海域と採餌海域を年次回遊する。彼らは繁殖海域において、コミュニケーション手段の一つとして鳴音を使うことが知られている。一方で、採餌海域における彼らの鳴音に関する研究は少なく、また鳴音の役割もほとんどわかっていない。本研究では、採餌海域におけるシロナガスクジラの鳴音の役割を明らかにすることを目的とした。野外調査は、2018年6-7月にかけて、シロナガスクジラの採餌海域の一つであるアイスランド北部のフーサビック湾において実施した。彼らの鳴音の役割を調べるために、クジラの背中に動物装着型の音響記録計と行動記録計を吸盤で装着し、回収した。行動記録計の深度と加速度記録からクジラの潜水を採餌、移動、休息の3つに分類した。2個体から記録計を回収し、それぞれ20時間と27時間のデータを取得した。合計875回(採餌798回、移動67回、休息10回)の潜水データが得られ、潜水深度は平均52 m、 最大133 mであった。音響記録計から、周波数帯約650 Hzの喉を鳴らすような「唸り音」が10回、100 Hzから40 Hzまで周波数が変化する「スウィープ音」が24回、クジラの潜水中に記録された。行動データと音響データを照合したところ、唸り音は連続的に生じる採餌潜水期間中に散在しており、潜水の開始や終了時に相当する平均12 mの深度帯で発せられていた。潜水の開始や終了時付近は、水圧が急変化することから、シロナガスクジラの唸り音は、体内の気体の体積変化に付随して発せられる音である可能性が高い。一方、スウィープ音は連続的に生じる採餌潜水の開始前や終了後の行動が変わるタイミングで発せられていた。クジラのスウィープ音は情報伝達のために使われると考えられていることから、シロナガスクジラはスウィープ音により採餌場の様子や状態を仲間に伝えている可能性が示唆された。


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