| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) M01-07  (Oral presentation)

堆積物コアの短期的変動における相関構造
Correlation structures in short-term variabilities of sediment cores

*中村知道, 土居秀幸(兵庫県立大学)
*Tomomichi NAKAMURA, Hideyuki Doi(University of Hyogo)

堆積物コアの時系列データの多くは、長期的なトレンドと短期的な不規則な変動の両方を併せ持つ振る舞いを見せる。本研究は、その短期的変動の相関構造の有無に関する調査を行い、その結果の検証を行ったものである。採取された堆積物コアのデータは、堆積物コアから薄く切り出された部分に含まれる成分の測定値である。この作業を堆積物コアの多くの部分に対して行うことで、様々な時期に対応した堆積物コアの測定値が得られ、それらをまとめたものが堆積物コアの時系列データとなる。こうして得られる堆積物コアの時系列データは、必然的に2つの特徴を持つこととなる。堆積物コアは、様々な物質が海底や地表などに長年に渡り積み重なり、圧縮されて出来たものであるため、どんなに薄く切り出したとしても、その部分は瞬間的のものではなく、ある期間のものである。そのため、得られる測定値は、ある期間の平均値のようなものとなる。また、堆積物コアを薄く切る際、その切り方によっては、堆積物コアの一部が使用されないことになる。これは、採取された堆積物コアの情報の一部が用いられないことを意味する。つまり、我々が現実的に手に入れられる堆積物コアの時系列データは、平均化されある期間の情報が抜け落ちたものである。このような困難な状況において、堆積物コアの時系列データの分析結果を正しく理解するには、平均化されておらず欠落した情報のない状態のデータ(堆積物コアが本来有している情報)の分析結果と、平均化され一部の情報が欠落したデータ(我々が用いる堆積物コアの情報)の分析結果の類似点と相違点を、予め詳細に検討しておくことが必要である。そこで本研究では、シミュレーションを用いてこの検討を行い、堆積物コアの時系列データが見せる短期的変動に相関構造が存在するかどうかについて調査し、その結果をシミュレーション結果に基づき検証した。


日本生態学会