| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-001  (Poster presentation)

森林攪乱は外来草本の侵入を促進する:間伐地での在来種と外来種の生活史と形質の比較
Forest disturbance promotes invasion of alien plant species: comparison of plant traits between alien and native species

*大嶋克海, 高橋耕一(信州大学)
*Katsumi OSHIMA, koichi Takahashi(Shinshu Univ.)

 外来植物の侵略は生態系に後戻りできない影響を与える可能性がある。外来植物に関する研究がこれまで多くなされているが、その多くは侵略後の時間が経過した群集での研究であり、侵入初期段階のプロセスの理解はあまりなされていない。そこで、本研究では間伐1年目と間伐されていない無傷のアカマツ林の林床植生を比較し、間伐が外来草本を増加させるのかどうかを調査した。また、外来植物の侵入がどのように達成されるかを周辺環境、植物形質、埋土種子の観点から検討した。
 非間伐林では、外来植物は地上植生にほとんど存在せず、土壌中でも外来植物の埋土種子は少数しか確認できなかった。一方、間伐林では、地上と土壌中の両方で極めて多くの外来植物が確認できた。間伐林と非間伐林の間で最も異なる条件は林冠層の開空度であり、間伐林において開空度が高かった。また、間伐林において、比較的太い主要な道路からの距離と外来植物の被度の間に負の相関があった。一方、土壌養分は外来植物の出現とは関係がなかった。間伐林に分布する外来植物は、同所的に出現する在来植物に比べ最大植物高、葉面積が大きく、葉の窒素濃度が高く、成長、競争、炭素同化能力に優れていることが分かった。さらに、外来植物は風散布型種子、動物散布型種子のような長距離移動可能な種子、1年草や2年草のような初期成長が速く、短い生活史を持つものが多かった。発芽時期に関しては、外来植物であるオオブタクサがより早く発芽したことを除き、外来植物と在来植物の間で差がなかった。
 以上のことから、間伐による攪乱後には外来植物は広範囲への素早い種子分散と短い生活史によって侵入が促進されること、そして、侵入の程度は外来植物の種子供給源と考えられる主要道路からの距離によって変化することが示唆された。


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