| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-008  (Poster presentation)

空間的な努力量配分の自己最適化による外来種管理
The management of invasive species with self-optimization for spatial effort allocation

*西本誠(東京大学), 宮下直(東京大学), 松田裕之(横浜国立大学), 長谷川雅美(東邦大学), 横溝裕行(国立環境研究所), 今津健志(千葉県多様性センター), 高橋洋生(自然環境研究センター), 深澤圭太(国立環境研究所)
*Makoto NISHIMOTO(Univ. Tokyo), Tadashi Miyashita(Univ. Tokyo), Hiroyuki Matsuda(Yokohama Nat. Univ.), Masami Hasegwa(Toho Univ.), Hiroyuki Yokomizo(NIES), Takeshi Imazu(Chiba Biodiv Center), Hiroki Takahashi(JWRC), Keita Fukasawa(NIES)

外来種管理において, 目的に応じて最も効率の良い管理計画の模索は大切であり, 最適化戦略は駆除作業の意思決定において大きな原動力となる。しかし現実的には, それは過程誤差や観測誤差といった不確実性により往々にして困難を伴う。モニタリングデータから最適化戦略を提供するフィードバックループの実装は, 不確実性に対処するのに役立つ。しかし, このような問題に対処可能なフレームワークは未だ提案されていない。そこで, 本研究では長期の捕獲データを有する千葉県による特定外来生物カミツキガメ(Chelydra serpentina) の防除をモデルケースとして, 外来種の生育環境や不確実性を考慮した空間的な努力量配分の最適化を可能にする枠組みを考案する。間接指標であるCPUEを密度指標として, 環境要因と捕獲努力量(罠日)を説明変数とし, 空間的自己相関を組み込んだ状態空間モデルを構築して個体群動態パラメータの推定を試みた。次に, 推定されたパラメータを用いて, 確率的ゆらぎを導入した最適化アルゴリズムであるシミュレーテッドアニーリング法により組み合わせ最適化問題を解き, 全ユニットの平衡密度の総和が最も低くなるような空間的な最適努力量配分を求めた。外来種の個体群動態と防除による影響評価を示し, 系の挙動のメカニズムを推察した。さらに, 千葉県が提案している目標低密度に抑えるためには、現在の努力量を増やす必要があるということを明らかにした。状態空間モデルと空間労力配分の最適化を組み合わせる本研究の手法は, 管理から得られた空間明示の密度指標があるときに有用であると示せた。管理計画と実行の蓄積により, 推定精度を改善し, 真に最適化された空間的努力量配分を推定することが可能である。本研究のアプローチは外来種管理と同様に不確実性を伴う野生生物管理や害虫駆除管理に適用することが可能であり, 実用的な意思決定支援のツールとして役立つと期待される。


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