| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-020  (Poster presentation)

九州地方の硫気荒原における外来草本メリケンカルカヤ Andropogon virginicus の侵入 【B】
Invasion of the alien plant Andropogon virginicus in solfatara fields of Kyushu, Western Japan 【B】

*Akihiro Yamamoto(Hiroshima Univ., Handa Municipal Museum), Jun Wasaki(Hiroshima Univ.), Yuichi Funatsu(Oita Pref. Hita High School), Soushi Osaki(Hiroshima Univ.), Takayuki Nakatsubo(Hiroshima Univ.)

硫気荒原は、温泉地や火山由来の噴気孔周辺に成立する荒原である。硫気荒原では、火山ガスや強酸性土壌、アルミニウムによる生育阻害などの影響を受けるため、硫気荒原植物と呼ばれるごく限られた植物しか生育できないとされてきた。しかし、発表者らは、九州地方の複数の硫気荒原において、外来草本メリケンカルカヤAndropogon virginicusの生育を確認した。メリケンカルカヤは、北米原産のイネ科植物で、実験条件下では、低pHに対する耐性が高いことが報告されているため、本種が硫気荒原への分布を拡大する可能性が考えられる。そこで本研究では、現地調査によってメリケンカルカヤの侵入状況を把握するとともに土壌環境の分析を行い、本種の将来的な分布拡大について考察した。
調査を行ったのは、小松地獄・明礬温泉・鍋山(大分県)、雲仙地獄(長崎県)、岳の湯・雀地獄・地獄温泉(熊本県)、栗野岳温泉・鉾投温泉・丸尾温泉(鹿児島県)の計10箇所の硫気荒原で、そのうち、小松地獄と雲仙地獄においてメリケンカルカヤの生育が確認された。この2箇所で行ったライントランセクト法による分布調査では、主要な硫気荒原植物であるツクシテンツキFimbristylis dichotoma subsp. podocarpa (環境省レッドリスト:VU)、ススキMiscanthus sinensisなどと一部混生しているのが観察された。
土壌分析の結果、メリケンカルカヤの根圏土壌pHは4.3〜3.4(平均3.8 ± 0.1, = 12)、ツクシテンツキは3.9〜2.5(平均3.4 ± 0.1, = 12)となり、ツクシテンツキの方が低いpHを示したが、両種の分布域は大きく重複していた。
ツクシテンツキの生育適地は非常に限られており(Yamamoto et al. 2018)、メリケンカルカヤの侵入拡大によって、これらの分布域を狭めることが懸念される。また、多くの硫気荒原は、景勝地もしくは景観保全地区となっているが、メリケンカルカヤが一面を覆うことにより、その景観を破壊する可能性もあり、早急な対策が必要と考えられる。


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