| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-045  (Poster presentation)

ナラ枯れ被害林分において行われた異なる施業方法が3年後の植生に与えた影響
The influence of different treatments on vegetation recovery after three years at forests damaged by oak wilt disease

*稲本太地(京府大生命), 長島啓子(京府大院生命), 田中和博(京府大院生命)
*Taiji Inamoto(KPU Life Environm. Sci.), keiko Nagashima(KPU G. Life Environm. Sci), Kazuhiro Tanaka(KPU G. Life Environm. Sci)

都市近郊に存在するアベマキ、コナラ林はナラ枯れの被害が発生しており、高木層を構成する樹木の多くが枯死している。さらに近年ではニホンジカの食害により下層植生の衰退が報告されている。一方、都市近郊に広がるアベマキ、コナラ林は、都市域の環境保全林として重要な役割を果たしており、その森林の更新、再生が課題となっている。しかし、ニホンジカの食害環境下にあるナラ枯れ被害林分の更新についての研究事例は限られている。そこで本研究では京都市近郊に存在するアベマキ、コナラ林において、①ナラ枯れ被害木のみ伐採し防鹿柵を設置した鹿柵設置区、②ナラ枯れ被害木のみ伐採し防鹿柵は設置しない鹿柵非設置区、③皆伐を行い防鹿柵を設置した皆伐区の3つの施業区を設置し、更新状況を把握することでこれらの施業がニホンジカの食害環境下のナラ枯れ被害林分において有効な更新手段となるかどうかを考察した。
施業区ごとの更新状況について把握するために、林分状況、萌芽状況、実生発生状況、種子散布量、環境要因(光環境、土壌含水率、土壌硬度、斜面位置)についてそれぞれ調査を行い、さらに実生と種子散布量及び環境要因との関係性、低木と環境要因の関係性について把握した。
得られた結果から今後の植生を予想すると、皆伐区は今後高層にアベマキ、コナラ、下層にコバノミツバツツジを含む多様な樹種から構成される森林となっていくと考えられ、すべての施業の中で最も目標とする森林に近づくことが予想された。鹿柵設置区は皆伐区よりも多様性に乏しい森林になっていくことが予想された。また、鹿柵非設置区は今後の更新が難しく、ソヨゴなどの不嗜好性樹種を中心に構成される森林になることが予想された。以上から、小面積の皆伐と防鹿柵の設置はナラ枯れ被害林分の更新において有効な施業であると考えられた。


日本生態学会