| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-071  (Poster presentation)

男もすなる小競り合いというふものを、女もしてみむとてするなり
Effect of major cheliped length on female interaction in the hermit crab.

*伊與田朋未, 木戸結菜, 和田哲, 石原(安田)千晶(北海道大学)
*Tomomi IYODA, Yuina Kido, Satoshi Wada, chiaki I Ishihara(Hokkaido Univ.)

武器形質は多くの分類群に見られる。このような形質はオスにおいて顕著であることが多い。それはオスの武器形質が、配偶相手としてのメスをめぐるオス間競争や、メスによる配偶者選択に用いられることに起因する。メスは武器形質を持たない種も存在するが、対照的にメスがオスと同じような武器形質を持つ種もいる。メスが武器形質を持つ理由については3つの仮説が立てられている;(1)メスにとって武器としての機能は不要だが、オスと遺伝子を共有しているため武器形質が発現する、(2)メスは武器形質を配偶相手としてのオスをめぐる競争のために用いる、(3)メスの武器形質は配偶者獲得以外の個体間の対立、特に資源獲得のために使われる。しかしメスの武器形質を対象とした研究はオスのそれに比べて乏しい。そこで、本研究では仮説(3)に着目し、ホンヤドカリのメスの武器形質の機能について検証することを目的とした。
ホンヤドカリは右鋏脚が左鋏脚より大きく、この特徴は雌雄共通である。本研究ではホンヤドカリのメスの右鋏脚が武器として機能するのか、またどのような形質(右鋏脚の大きさ、体長、貝殻の質など)が右鋏脚の使用に影響するのかを検証した。本種をメス同士、メスとオス、オス同士、右鋏脚の欠損したメスとそうでないメス、という組み合わせで2個体ずつ同じ容器に入れ、それぞれの行動を観察した。記録した行動は右鋏脚の使用、相手個体から逃げる動作、抱え込む動作である。メス同士群とオス同士群で、右鋏脚の使用頻度は同程度であった。相手個体の右鋏脚が小さく、観察個体の右鋏脚が大きいほど、右鋏脚の使用する傾向があった。また、右鋏脚が欠損したメスは、持つメスよりも相手から逃げる行動を起こした。これらの結果はメスの右鋏脚も、武器としての機能を有することを示唆する。発表では貝殻の質と右鋏脚の使用の関係についても考察したい。


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