| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-104  (Poster presentation)

ヤマトシリアゲの武器形質が交尾戦術に与える影響
The influence of weapons on mating tactics in scorpionfly.

*石原凌, 宮竹貴久(岡山大学大学院)
*Ryo ISHIHARA, Takahisa Miyakake(Okayama Univ.)

雄の武器形質サイズは、雄の交尾戦術に影響を与える。例えば大型の雄は雄間闘争によって雌や餌場からほかの雄を排除し、雌との交尾機会を独占する。それに対し競争力が弱く交尾機会の少ない小型の雄は、サテライト戦術やスニーキング戦術など様々な代替戦術を採用する。ヤマトシリアゲの交尾には、(1)婚姻贈呈・(2)強制交尾・(3)摂食中の雌に交尾(摂食中交尾)の三つのパターンが確認されている。また、本種は婚姻贈呈用の餌や雌をめぐって、雄同士が尾部末端の把握器(武器)を用いた闘争を行うが、この把握器サイズが交尾戦術に影響を与えているかどうか調べた研究は無い。また本種の交尾戦術は体サイズや前翅の左右対称性のゆらぎ(FA)といった形質に影響されない(昨年、本学会大会で発表)が、把握器のサイズが交尾戦術に影響を与える可能性はある。そこで本研究では、本種の雄の把握器のサイズと交尾戦術の関係について調べた。交尾行動を観察した結果、把握器のサイズによって、使用する交尾戦術や交尾持続時間に有意差は確認されなかった。また、再交尾を行ったペアでは摂食中交尾後に婚姻贈呈を行うなど、複数の交尾戦術を採用する個体も確認された(N=5)。特に摂食中交尾では、多くの個体(N=8)は交尾終了後も餌にとどまり、婚姻贈呈に餌を再利用しようとした。これらのことから、本種の交尾戦術は、左右対称性や武器形質の大きさの影響を受けず、例えば餌を見つければ婚姻贈呈、雌を見つければ強制交尾など、状況によって可塑的に変化する条件依存戦術である可能性が考えられる。本種の交尾戦術は、条件依存的 であるため、雄の武器形質や前翅の左右対称性のゆらぎが個々のオスの交尾戦術と関係していない可能性が高いと推察されるが、今回の研究ではサンプルサイズが少ないため、今後さらにサンプルサイズを増やす必要がある。


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