| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-128  (Poster presentation)

クローナル植物スズランの繁殖特性-種子繁殖とクローン成長の寄与に関する集団間変異
Reproductive characters of a clonal plant, Convallaria keiskei -variation among populations on contribution of seed and clonal reproductions

*三木田涼佳, 大原雅(北大・院・環境科学)
*Ryoka MIKITA, Masashi OHARA(Hokkaido Univ. Env. Science)

 植物には花を介した種子繁殖に加え、クローン成長により新たなシュートを生産するものも存在する。このような植物をクローナル植物と呼ぶ。本研究の対象種であるスズラン(Convallaria keiskei)もクローナル植物であり、強い芳香を持つ花と地下茎の伸長によるシュート形成を行う。クローナル植物では、個々のシュートをラメット、同じ遺伝子型をもつシュートの集合をジェネットと呼ぶ。北海道十勝地方中札内村で行われた先行研究(Araki et al. 2005)では、種子繁殖に関しては、自家不和合性を持ち虫媒により種子生産が行われることが明らかになっている。つまり、種子生産には、昆虫により異なるジェネット間での花粉の授受が必要となる。したがって、単一ジェネットで構成された集団では、仮に集団サイズが大きく十分な昆虫の訪花があったとしても、種子繁殖は十分に機能しない。中札内のスズラン集団は集団サイズが大きく、多くの異なるジェネットがクローン成長によりモザイク状に広がり、互いに接することで両繁殖システムが機能している。
 本研究は、中札内集団の研究結果を受け、他の北海道内のスズラン集団における集団の維持機構を比較研究することを目的に行った。道内各地の多様な環境に生育する24集団を対象に、まず花数、果実数、結果・結実率など種子繁殖に関する調査を実施した。その結果、花序当たりの花数に集団間で差がなかったのに対し、結果率に関しては内陸集団では高く、海岸に近い集団では比較的低い傾向が認められた。このことから、集団が生育する環境により、種子繁殖が行われている程度に違いがあることが示唆された。今後は、各集団の自家不和合性の有無を含めた種子繁殖特性の確認や、集団内のクローンの広がりを含む遺伝的多様性の把握を行う予定である。


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