| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-143  (Poster presentation)

マツナ属植物における二型種子生産比率とその決定要因
Dimorphic seed productions in Suaeda species and factors affecting the ratio

*手塚絢美(佐賀大学), 喜多章仁(佐賀県立宇宙科学館), 徳田誠(佐賀大学)
*Ayami TETSUKA(Saga Univ.), Akihito KITA(Saga Pref.Space Mus.), Makoto TOKUDA(Saga Univ.)

種子散布は植物にとって最大の分布拡大手段であり、子孫を残すために最も重要なイベントの一つである。種子散布戦略の一例として複数のタイプの種子を作る種が知られている。マツナ属は塩生植物であり、日本国内ではシチメンソウ、ハママツナ、マツナ、ヒロハマツナの 4種が知られるが、このうち、ヒロハマツナを除く3種は、休眠性の異なる2種類の種子(軟実種子、硬実種子)を作ることが知られている。例えば、国内では有明海沿岸の泥干潟にのみ分布するシチメンソウの場合、ほとんどは休眠性が低い軟実種子であるが、ごく一部、休眠性の高い硬実種子が形成される。佐賀県で過去最高気温と最少年間雨量を記録した1994年には、硬実種子の比率が10~25倍増加した事例が報告されており、種子比率は環境条件により変化することが示唆されるが、その詳細は未解明である。本研究では、マツナ属4種について2015年から2017年にかけて野外における軟実種子と硬実種子の比率を調査するとともに、シチメンソウを用いた栽培実験により、水量、塩分濃度、肥料濃度、植食者などを変化させた際の種子の比率を調査した。その結果、4種のマツナ属のうち砂干潟に生育する種では硬実種子の比率が相対的に高くハママツナでは約25%、マツナでは約50%であった。一方、泥干潟に生息するシチメンソウでは低く、2015〜16年は0.3%未満、漂着物の影響などで枯死率が高かった2017年は2.1%であった。ヒロハマツナでは硬実種子は確認されなかった。栽培実験では、水量を減らした処理区で全ての株が枯死した。それ以外の処理区では硬実種子の比率は1%未満であり、差は認められなかった。以上より、砂干潟に生息する種では硬実種子の割合が高いこと、及び、野外で高い致死ストレスがかかる環境では硬実種子の割合が増加することが示唆されたが、栽培実験では比率決定要因は解明されなかった。


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