| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-156  (Poster presentation)

オニグルミ(Juglans ailantifolia)種子の重力散布様式
Gravity dispersal pattern of Japanese walnut(Juglans ailantifolia) seeds

*大河龍之介(北海道大学), 野田隆史(北海道大学), 鷹西俊和(中川研究林)
*Ryunosuke OKAWA(Hokkaido Univ.), Takashi Noda(Hokkaido Univ.), Toshikazu Takanishi(Nakagawa Experiment Forest)

多くの堅果植物は、地上に落下した種子を動物が運ぶことにより散布が行われる。これまでは、地上に落下した後の動物による種子の移動(二次散布)が着目されてきた。しかし、堅果植物がどの程度散布を動物に依存しているかを評価する場合、重力による散布様式(一次散布)を考慮する必要がある。そこで、本発表では大型の堅果植物であるオニグルミ(Juglans ailantifolia)を用い、重力により種子がどこまで散布され、落下した種子はどのような分布をしているのかを明らかにすることを目的とした。シート状のシードトラップを用いて、3本のオニグルミの樹木から落下した種子の落下場所と種子の重量を測定した。得られたデータから、母樹からの散布距離及び種子の集合度、及び種子重量と種子の散布距離と散布方向の関連性を評価した。その結果、ほとんどのオニグルミ種子は母樹の樹冠内部に落下し、全方向に種子が落下する傾向があった。また、種子の落下は地形の傾斜の影響を受け、斜面下側に多く落下する傾向が認められた。樹冠内部の種子の分布には、近い距離での集合傾向が見受けられ、種子が固まって落下していることがわかった。更に、種子の母樹からの距離と重量には正の相関が見受けられ、母樹から離れた種子程重くなることがわかった。以上より、個体群の拡大としては効果の小さい樹冠内部への重力散布が多かったことから、主な散布体は重力以外に依存していると考えられる。今後は種子の分布が種子散布者となる動物へどのように影響を及ぼすのか、また動物散布が種子の発芽へどう貢献するのかについて、検証していく必要がある。


日本生態学会