| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-177  (Poster presentation)

鉱山跡地に自生する陰生植物アオキの重金属耐性機構とその季節変化
Seasonal changes of heavy-metal tolerance in shade plant Aucuba japonica.

*土山紘平, 山路恵子, 春間俊克(筑波大学・生命環境)
*Kouhei DOYAMA, Keiko YAMAJI, Toshikatsu HARUMA(Univ. of Tsukuba)

本研究の調査地である鉱山跡地は、操業時の排煙に含まれていた重金属 (Pb、Cu、Zn、Cd) が現在も土壌に残存し、土壌は酸性を呈している。研究対象植物のアオキ (Aucuba japonica Thunb.) は調査地に多数自生しており、何らかの重金属耐性を有していると考えられた。アオキが生育する林床の光環境は季節に応じ変化し、生理的特性 (光合成および蒸散等) が変動することで、重金属吸収や解毒物質の産生に量的・質的変化をもたらす可能性がある。本研究では夏期および冬期という生育環境の大きく異なる時期に調査および分析を行い、アオキの重金属耐性機構の解明を行った。
含有元素分析から、夏期および冬期いずれにおいても、根に高濃度のZnが含有されていることが明らかとなった。解毒物質分析から、根には有機酸のcitric acidおよびmalic acidと、極めて高濃度のaucubinが含有され、それらがZnを解毒している可能性が示唆された。また、冬期において有機酸の濃度が有意に高かったことから、冬期では有機酸によるZnの解毒への寄与が大きい可能性が推察された。共焦点レーザー蛍光顕微鏡によるZnの局在観察の結果、アオキの根では夏期と冬期ともに表皮、皮層および中心柱の細胞壁にZnが局在し、細胞壁隔離によるZnの解毒が行われていることが示唆された。また、皮層の細胞内に局在するZnは上記の解毒物質により解毒され、細胞間隙に局在するZnは、細胞間隙に隔離することでZnの毒性を低減している可能性が推察された。
以上より、夏期および冬期いずれにおいてもアオキは根に高濃度のZnを蓄積し、細胞壁および細胞間隙でのZnの隔離による解毒に加え、細胞内での有機酸およびaucubinといった解毒物質による解毒を行っていることが示唆された。また、夏期に比べ冬期で有機酸によるZnの解毒の寄与が大きい可能性が考えられた。


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