| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-221  (Poster presentation)

長野県深見池におけるミジンコ種内系統の共存機構とその成立過程
Coexisting mechanism and its formation process of different lineages of Daphnia pulex in Lake Fukami-ike

*平田優香(東京大学), 小田切悠(東京大学), 大竹裕里恵(東京大学), 吉田丈人(総合地球環境学研究所, 東京大学)
*Yuka HIRATA(University of Tokyo), Haruka Odagiri(University of Tokyo), Yurie Otake(University of Tokyo), Takehito Yoshida(RIHN, University of Tokyo)

 一つの個体群には複数の異なる遺伝子型が含まれるが、それらの共存がどのような過程を経て成立したかを知ることは、一般的に難しい。同時に侵入した複数の遺伝子型間で形質置換が起きる可能性や、侵入遺伝子型が先住遺伝子型とは異なるニッチを利用して共存する可能性などが考えられる。日本国内に生息するミジンコ(Daphnia pulex)は、北米由来の4つの異なる遺伝子系統(JPN1~4)から構成され、いずれの系統も絶対単為生殖であることが知られている。長野県深見池には、そのうちの2系統(JPN1とJPN2)の共存が報告されている。この2系統の繁殖戦略について調べた先行研究は、JPN1はオスを生産するのに対しJPN2はオスを生産しないことを報告している。また、2系統の個体群増殖速度が日長条件によって逆転するほか、休眠フェーズへの移行に必要な条件が異なっていることも指摘している。このような環境条件への繁殖形質の応答の違いが2系統間で時間的なニッチ分割をもたらし、2系統の共存機構の一つとなっている可能性が示された。しかし、先行研究で用いられた各系統の株数が少なかったほか、繁殖形質によるニッチ分割がどのような経緯を経て成立したかについては、未解決となっている。
 そこで本研究では、先行研究で示された仮説の検証と、共存機構に関わる繁殖形質の過去から現在までの時間的変動を検討することを目的とした。現在、堆積物由来の休眠卵から孵化した個体を用いて、日長条件に対する繁殖形質の応答を評価する実験を行っている。本発表では、研究の概要と予備的な結果について紹介する。


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