| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-234  (Poster presentation)

寄生植物による最適な搾取のスケジュール
Optimal exploitation schedule of parasitic plants

*遠藤智也, 山道真人(東京大学)
*Tomoya ENDO, Masato YAMAMICHI(The University of Tokyo)

 寄生植物は、宿主植物から栄養・水分を搾取して生育する植物である。草原群集において優占種に寄生することで種多様性を高めたり、農作物に寄生して生産量を減らしたり、といった影響を周囲に及ぼす重要性ゆえに、様々な観点からその生態が調べられてきた。しかし、生育期間の長さが宿主とほとんど同じである寄生植物にとって、どのようなスケジュールの搾取戦略が適応的か、という問題については未だ理解が進んでいない。そこで数理モデルシミュレーションによって、一年生の寄生植物1個体が宿主植物1個体に寄生した状況で、適応度を最大化する搾取戦略を調べた。生育期間終了時のバイオマスを適応度の指標とし、宿主は寄生植物よりも生育速度が速いと仮定した。
 生育期間を通じて搾取の強さが一定の場合、搾取が強すぎると生育期間中に宿主が枯死するため、中程度の搾取レベルが最適になることが分かった。最適搾取レベルは、生育期間が短いほど、また宿主の生育速度が速いほど強くなった。一方、生育期間中に搾取の強さが変化する場合、最初は宿主に栄養を提供して、ある時点から搾取を行うというスケジュールが最適になった。ここでも搾取レベル一定の場合と同様に、生育期間が短く、宿主の生育速度が速い条件で搾取の開始時期が早くなることが分かった。ただしこの時には、搾取レベル一定の場合よりも、最終バイオマスが増える傾向があった。また、十分な光合成能を持ち宿主なしでも繁殖できる「条件的寄生」と、宿主なしでは繁殖できない「絶対寄生」を比べると、後者では短い生育期間で強い搾取をする戦略が有利になることが分かった。以上の結果から、(1)緯度や標高が高いために生育期間が短く、(2)栄養・水分が豊富で宿主の生育速度が速く、(3)宿主への依存度が大きいという条件であれば、搾取が強くなり、周囲の生態系に及ぼす影響も大きいだろうという予想が得られた。


日本生態学会