| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-240  (Poster presentation)

中国フルンボイル草原の流動砂丘における草方格設置が土壌クラストの生成に与える影響
The effects of straw checkerboards on the formation of soil crusts in Hulun Buir Glassland, China

*木村圭一(東大・農), 吉川賢(岡山大・地域総合), 烏云娜(大連民族大・環境資源), 大黒俊哉(東大・農)
*Keiichi KIMURA(The University of Tokyo), Ken Yoshikawa(AGORA), Yunna Wu(Dalian Nationalities Univ.), Toshiya Okuro(The University of Tokyo)

砂丘再活動が問題視される北東アジア乾燥地の荒廃草原では灌木の植栽や草方格の設置等による砂丘固定が行われている。これら砂丘地でもしばしば見られる土壌クラストは砂の移動抑制や土壌の栄養状態の改善に寄与することが知られている。クラスト形成には植生や気候、土壌の状態などが関与する一方、砂丘固定に伴う土壌質の変化とクラスト形成の関係は不明瞭である。そこで本研究は、草方格が土壌やクラストの変化を通じてクラストの形成と発達にどう関係しているか検討した。
研究は中国フルンボイル市ガンツールで行った。ここでは流動砂丘固定のため牧草・灌木の植栽や草方格の設置が行われている。マメ科灌木(Caragana microphylla)が優占する砂丘地で、草方格が設置されている場所とされていない場所をそれぞれ3サイト、10m×30mの大きさで設けた。灌木の植栽形状に合わせ、各サイトに1.5m×1.5mか1m×2mの調査区を10個ずつ設置し、各調査区内で灌木の平均幅と高さ及びクラストの被度を測定した。高被度のクラストが確認された調査区を各サイトから5つずつ選び、クラストの厚さを測定した上で、クラストとその直下5cmの土壌を別々に採取し、粒径分布、全炭素量、全窒素量、水分量、pHを測定した。
解析の結果、クラスト被度は草方格の存在するサイトの方が有意に高かった。またクラスト被度はクラスト中の炭素量・窒素量と有意に強い正の相関を持ち、クラストの厚さは植生量と正の相関があることが示唆された。一般化線形モデルを用いてクラストの形成に影響を及ぼす要因を解析すると、クラスト被度は草方格の有無、厚さは植生量の影響を受けることがわかった。草方格が分解やダストの捕捉によって地表の炭素量を増加させ、クラストの分布に適した環境となり、クラストの窒素量も増加したと考えられた。植生は日光量を調節しクラストの発達に寄与した可能性がある。


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