| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-249  (Poster presentation)

大規模洪水攪乱に伴う河川底生無脊椎動物群集の回復過程:2016年北海道台風の事例
Recovery of stream macroinvertebrate communities from a large flood disturbance: a case study of Hokkaido typhoons in 2016

*島本悠希, 福井翔, 渥美圭佑, 中村慎吾, 山崎千登勢, 立花道草, 守田航大, 乃美大祐, 大平昌史, 渡辺のぞみ, 小泉逸郎(北海道大学環境科学院)
*Yuuki SHIMAMOTO, Sho FUKUI, Keisuke ATSUMI, Shingo NAKAMURA, Chitose YAMAZAKI, Michikusa TACHIBANA, Kodai MORITA, Daisuke NOMI, Masashi OHIRA, Nozomi WATANABE, Itsuro KOIZUMI(Hokkaido Univ. GSES)

近年の気候変動に伴い、世界中で洪水や干ばつなどの異常気象の頻度が高まることが予測されている。特に、河川生態系はこれらの異常気象の影響を受けやすい。したがって、異常気象による攪乱に対して、河川生態系がどのように応答するかを予測することは喫緊の課題である。しかし、こういった異常気象を事前に予測することは難しく、複数地点で攪乱への生態系の応答を調べた事例は少ない。2016年8月下旬に、北海道を襲った複数の台風は、再起率100年を超える大規模なものであり、河川生態系と周辺地域に大きな被害を与えた。本研究は、大規模な洪水攪乱に対する河川底生動物群集の応答を明らかにすることを目的とした。
かなやま湖より上流部の空知川水系において、台風後の2016年11月から2018年12月にかけて、支流域・本流域合計12地点にて、攪乱の規模と水生無脊椎動物の種数と個体数を調べた。採集した水生生物は、可能な限り属まで同定し、分類群数と個体数を測定し、生活型に分類した。
解析の結果、底生無脊椎動物群集の個体数、分類群数に対して攪乱が負の影響を与えることが示唆された。土砂流が発生した地点では、主要な水生無脊椎動物である、カゲロウ、カワゲラ、トビケラがほとんど見られなかったが、土砂流が発生していない小支流では豊富な水生無脊椎動物が残存していた。残存していた水生無脊椎動物は、生活型によって個体数が異なっていた。また、2017年、2018年のデータから、多くの地点で水生無脊椎動物の多様度、個体数が回復していることが示唆された。また、生活型ごとに個体数の回復の過程が大きく異なっていた。これらの結果より、水生無脊椎動物は攪乱の規模が大きい地点においては1度大きく減少するが、移入等を経て、比較的短期間で個体数と多様度を回復し、その速度は生活型ごとに異なることが示唆された。


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