| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-264  (Poster presentation)

個人属性と経験が文化的サービスの主観的評価に与える影響
Personal factors for influencing cultural ecosystem services

*田村優衣(首都大学東京)
*Yui TAMURA(Tokyo Metropolitan University)

生態系サービス(ES)とは、生物多様性を基盤とする生態系がもたらす恵みの事であり、ESの一機能として分類される文化的サービス(CES)は、自然から供給される精神的、文化的な恵みのことを指す。CES以外のESについては、経済評価をはじめとする定量化が進んでいるが、CESは非物質的な恵みであるという特性から、経済評価のように価値が明瞭な評価基準を設定することが困難とされている。そこでCESの価値はサービスを受益する人間による主観的評価によって定量化する試みが行われているが、実際に自然資本(生態系)からCESが供給されているのかは検討されていない。そのため、供給されているCESの具体的な種類、供給量の把握を進めていく必要があると考えられる。
そこで本研究は、都市公園内の緑地が供給するCESを具体的に捕捉することを目的にアンケート調査を行った。まず緑地の景観ごとに実際に供給しているCESの種類及び供給量を主観的評価によって定量化を試みた。さらにはその主観的評価に影響を及ぼす個人の要因についても検討した。その結果、草原景観と森林景観、さらには林床植生の被覆度が異なる森林景観は異なる種類のCESを供給しており、供給量も異なることが明らかとなった。また、レクリエーションの機会、自然景観の保全、神秘的体験、芸術的なインスピレーションのCESとしての供給があるという個人の主観的評価には、過去の経験や現在の自然への態度は影響を与えていないという結果となった。
本研究では特徴が異なる公園内の景観が供給するCESの種類と供給量を明らかにすることができた。これにより今後のCESの価値評価は実体を伴って行うことが可能となり、CESを維持、向上させるような生物多様性の保全の実現に貢献できると期待される。


日本生態学会