| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-275  (Poster presentation)

キーストーン種は時間変化するか?:琵琶湖の植物プランクトン群集を例に 【B】
Are keystone species temporary consistent in a plankton community of Lake Biwa? 【B】

*赤石亮将(東北大・院・生命), 池田将平(琵環研セ), 一瀬諭(琵環研セ), 長田穣(東北大・院・生命), 川津一隆(東北大・院・生命), 京極大助(東北大・院・生命), 古田世子(琵環研セ), 近藤倫生(東北大・院・生命)
*Ryosuke AKAISHI(Tohoku Univ.), Shohei Ikeda(LBERI), Satoshi Ichise(LBERI), Yutaka Osada(Tohoku Univ.), Kazutaka Kawatsu(Tohoku Univ.), Daisuke Kyogoku(Tohoku Univ.), Seiko Furuta(LBERI), Michio Kondoh(Tohoku Univ.)

キーストーン種とは、その生物量に比して大きな影響を生物群集に及ぼしている生物種を指す。従来の多くの研究では、生態系において特定の種がキーストーン種の役割を果たすと仮定することが多かった。しかし、生態系を取り巻く環境は変動しており、個々の種が生物群集に及ぼす影響の強さについても時間の経過とともに変動する可能性がある。そこで我々は野外観測データの解析により、様々な生物種がキーストーン種の役割を異なる時期に果たしている可能性の検証を試みた。
本研究では、キーストーンの役割を有する種の時間変化を調べるために、時系列データ解析手法の1つであるEmpirical Dynamic Modelingを使用した。琵琶湖における過去39年間の植物プランクトン群集の毎週の個体数調査データを例に、EDMによって植物プランクトンの3つの群集レベルの特徴、細胞数・種数・総体積、に対して強い影響を有する種の特定を行った。具体的には、因果推論の手法であるConvergent Cross Mappingを用いて植物プランクトンの個々の種の個体群密度とそれぞれの群集レベルの特徴との因果関係を特定した上で、S-map法を用いてそれらの種が群集に及ぼす影響の時間変動を定量化した。その結果、植物プランクトン群集には、植物プランクトン全体の細胞数・種数・体積に対して因果を有する種、有していない種が存在しており、その因果は状況依存的であることが分かった。群集への影響の符号についても正負の両方が存在し、さらに生物種によってはその値が時間変動しているものもあった。これらの結果は、キーストーンの役割は時期によって異なる種が担っていることを示唆している。


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