| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-309  (Poster presentation)

林床の果実はいつ無くなるのか:サクラの開花・結実量と散布者の時間的変化の影響
Effects of temporal variation in flower and fruit production of Cerasus trees and frugivorous birds on fruit removal in bird-dispersed shrubs

*前田大成, 北村俊平(石川県立大学)
*Taisei MAEDA, Shumpei KITAMURA(Ishikawa Prefectural Univ.)

日本の温帯林の多くの樹種は被食散布であり、その種子散布過程は散布者となる動物の個体数や採食行動により大きく変化する。林床で結実する鳥散布植物(以下、林床植物)では、果実熟期に対し種子散布期が遅く、ある時期まで果実が持ち去られない現象が見られる。これには、①散布者となる鳥の個体数、②群集全体の資源量(花蜜、果実)、③林床植物の果実の質、などの時間的変動が影響すると考えられる。本研究では、春から初夏の林床植物を対象として、1)誰がいつ種子散布するのか、2)その種子散布期を決める要因は何か、について検討した。調査対象は石川県金沢市角間のヒメアオキ18個体(果実熟期は3月下旬-5月上旬)、ニワトコ12個体(5月下旬-7月上旬)とした。両種の果実食者を記録するため、自動撮影カメラLtl-Acorn6210を設置した。ヒメアオキは3種(ヒヨドリ、シロハラ、クロツグミ)、ニワトコは7種(キジバト、キビタキ、オオルリ、ヤマガラ、ヒヨドリ、メジロ、クサアリモドキ)によって果実が持ち去られ、主な種子散布者は鳥だった。両種とも果実が熟してから2-3週間後に果実持ち去りのピークがみられた。調査地では、①スポットセンサスによる生息個体数推定、②優占種であるサクラ属の開花個体数と30秒間の樹上の残存果実数の計数、③簡易糖度計による果実の糖度測定、を週単位で行った。①②との相関を検討した結果、ヒメアオキでは①②の影響は不明瞭だったが、すべてのサクラ類が散終し始めた4月下旬に果実持ち去りのピークがみられた。ニワトコでは②の影響がみられ、樹上のサクラ果実が減少し始める6月中旬に果実が持ち去られた。また両種とも③の影響はみられず、果実糖度は時間とともに増加しなかった。したがって、散布者となる鳥の個体数の増加やサクラ類の開花・結実量の減少により、相対的に両種の餌資源としての価値が上昇すると種子散布され始めると考えられた。


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