| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-318  (Poster presentation)

ヒサカキ・ハマヒサカキの送粉システム
Pollination ecology of Eurya japonica and Eurya emerginata

*龍野瑞甫, 大澤直哉(京都大学)
*Midzuho TATSUNO, Naoya Osawa(Kyoto Univ.)

 被子植物の多くは、送粉を幅広い分類群の昆虫に依存していることが知られている(e.g. Waser et al. 1996)。訪花昆虫の活動量が多い暖かい季節に開花する植物は、送粉昆虫の獲得競争にさらされている一方、寒い季節に開花する植物については、送粉者の獲得競争が穏やかであると考えられる(Rathcke 1983)。従って、寒い季節に開花する植物は、暖かい季節に開花する植物とは異なる送粉特性を有しているものと推察される。暖かい季節に開花する植物の送粉生態については数多くの研究がなされてきたが(e.g. Bosch et al. 1997)、寒い季節に開花する植物に着目した研究はきわめて少ないのが現状である。ヒサカキ・ハマヒサカキは、気温が低い季節に開花する雌雄異株の常緑低木常緑樹である。ヒサカキは初春に、ハマヒサカキは晩秋に開花する。本研究では、ヒサカキ・ハマヒサカキの繁殖様式を解明することを目的として、それらの訪花者、花形質の特徴を調査した。調査地は高知県東洋町で、ヒサカキについては、2016/3/16 – 3/28(計87時間)に、ハマヒサカキについては、2015/11/30 – 12/9(計44時間)に、日中及び夜間に、訪花昆虫を採集した。花の形質として、花の直径、花蜜糖度、花蜜糖量を測定した。その結果、ヒサカキには5目367個体の訪花者が、ハマヒサカキには3目389個体の訪花者が訪れた。両種とも、訪花者のうち、70 %以上がハエ目であった。花の直径は、ヒサカキはハマヒサカキより有意に大きく、糖度は、ヒサカキはハマヒサカキに比べて有意に高かった。24時間の袋掛けした花の糖量は、ハマヒサカキはヒサカキに比べて多い傾向があった。以上の結果から、ヒサカキ・ハマヒサカキ間で、複数の花形質について有意な差異があるものの、両種とも送粉者は、多くの植物で送粉者と知られていないハエ目昆虫である可能性が示唆された。


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