| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-323  (Poster presentation)

多摩川中流域における哺乳類の河川敷利用と河辺植生の生態学的意義
Utilization of riverbed of mammals in the middle in the middle basin in the Tama river and ecologically meaning of riverside vegetation

*浅田知輝, 倉本宣(明治大学)
*Tomoki Asada, Noboru Kuramoto(Meiji Univ.)

 野生動物にとって河川敷は重要であり、タヌキは人目を避けやすく安全性の高い環境を好むことが明らかにされており、河川敷の樹林や竹林などの生態系が生息場所として重要な役割を担っている。
 植生の異なる4か所の地点にセンサーカメラを設置した。撮影結果をもとにそれぞれの地点の動物の利用について考察し、統計を用いて利用の差を解析した。また航空写真を用いて景観生態学的調査を行った。
 河川敷はWilcoxon符号順位検定の結果から河川敷はネコよりもタヌキの利用が主であることが明らかとなった。他の動物による競合が起こっていないという点から多摩川の河川敷は都市域のタヌキにとって重要な景観であることが示唆された。
 同じ場所で30分以上連続して同種の哺乳類の写真が撮られるといったことはなかったため、河川敷の利用は生息地としての利用よりも移動経路としての利用が主であると推察される。
 航空写真の結果から、移動経路としてのタヌキの利用は孤立している樹林よりもより幅のある草原の方が増加することが推察された。小さい樹林では生息地としての利用はあまりされないことが明らかとなった。このことも考慮して3地点を見比べると、縦断的に植生が途切れずに、つながっていることが哺乳類にとって重要である可能性がある。Spearmanの順位相関係数の結果から4地点での横断的な違いでは住宅地からの距離とカメラを設置している河川敷に相関がみられたが統計的に有意ではなかった。
 カイ二乗検定の結果からⅠ~Ⅲの各地点を比較するとタヌキは地点Ⅲの利用を最も多く利用していて地点Ⅰの利用が最も少ないことが明らかとなった。またこれにより人によって管理されている河川敷では、タヌキが好んで利用する景観とそうでない景観が存在することが明らかになった。


日本生態学会