| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-413  (Poster presentation)

市街地植生におけるクチベニマイマイの季節的移動と利用植物
Seasonal migration and utilization of Euhadra amaliae in urban vegetation

*吉村理(龍谷大学, 理工学研究科), 野村将一朗(龍谷大学, 理工学研究科), 鶴谷峻之(龍谷大学, 理工学部), 太田真人(龍谷大学, 里山学研究センター), 遊磨正秀(龍谷大学, 理工学部)
*Osamu YOSHIMURA(Ryukoku Univ., Grad Sch of Sci and Tech), Shoichiro NOMURA(Ryukoku Univ., Grad Sch of Sci and Tech), Takayuki TURUTANI(Ryukoku Univ., Fac of Sci and Tech), Masato Ota(Ryukoku Univ., RCS), Masahide YUMA(Ryukoku Univ., Fac of Sci and Tech)

 クチベニマイマイEuhadra amaliaeは有肺目オナジマイマイ科マイマイ属に属する、近畿地方から中部地方西部にかけ広く分布している樹上性の陸産貝類である。同じく樹上性のサッポロマイマイEuhadra brandtii Sapporoでは春先に樹上へ、秋の終わりに落葉の積もった地表へ季節的移動を行うことによって、活動期の捕食を回避し生存率を高め、樹上の餌資源を利用することが報告されているが、本種を対象とした季節的移動に関する研究は行われていない。本研究では季節を通してラインセンサス調査を行うことで、マーキング個体の季節的移動とその利用植物を明らかにし、樹上生陸産貝類の季節的移動に関する知見を得ることを目的とした。なお、調査は2018年8月7日~2018年12月2日にかけ、滋賀県大津市一里山の商業施設付近を流れる水路の法面植生2面(315m,280m)にて行った。
 クチベニマイマイ計863個体をマーキングし調査を行った結果、調査地内の分布は局所的で、個体の多くは位置と高さが2.0m、照度が2-4klxの場所に集中していた。また単回帰分析と重回帰分析を行った結果、本種の個体数と正の相関が見られた環境要因は法面植生ごとで異なっており、有意な負の相関は認められなかった。なお、本種の平均移動速度は法面植生間で約20m/dayの差が見られ、隣接する道路表面の構造や平均照度の変動の違いによって、本種の移動速度に差が生じたことが示唆される。一方、付着高別の頻度分布は本種を対象とした先行研究の結果と一致していたが、単回帰分析では片側の法面植生でのみ本種の平均付着高と樹高の間で有意な正の関係が認められた。このことから本種は、生息地に関わらず付着高別頻度分布の傾向は近似するが、樹高の高い場所ではより高い場所へ、その付着位置を変えると考えられる。また、本種が付着していた植物とその付着位置より、特に幹に付着した個体が多かったことから、本種はつる植物より樹木に集まると考えられるが、その選択性については今後も検討が必要である。


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