| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-456  (Poster presentation)

酸素濃度とpHは土壌中NO2-の非生物的変換にどのような影響を及ぼすのか?
How do the pH and O2 concentration affect the abiotic transformations of NO2- in the soils ?

*田中直斗(中央大学), 黒岩恵(中央大学), 川合洸(中央大学), 小田智基(東京大学), 諏訪裕一(中央大学)
*Naoto TANAKA(Chuo Univ.), Megumi KUROIWA(Chuo Univ.), Hikaru KAWAI(Chuo Univ.), Tomoki ODA(The Univ. of Tokyo), Yuichi SUWA(Chuo Univ.)

亜硝酸(NO2-)は反応性が高く、非生物的に多様な形態の窒素に変換されうることが知られている。従来、土壌環境における化学的な窒素循環の重要性は、滅菌した土壌を用いて検証されてきた。しかし、滅菌操作に付随して土壌の物理化学性が大きく変化してしまうために、その重要性は十分に明らかにされていない。そこで本研究では、土壌の化学性がNO2-の非生物的変換に及ぼす影響を検証することを目的に、フィルター滅菌した土壌抽出液に15NラベルしたNO2-を添加, 培養し、変換後の産物を定量した。
本研究では、2地点の森林の鉱質土層(0-10 cm)または有機物層から採取した土壌を水抽出し、孔径0.20 μmフィルターで滅菌した抽出液を作成した。これをpH 3とpH 6-7の2段階に調製し、21 % O2または0 % O2条件で、15N- NO2- (終濃度1 mM)を添加・培養した。1, 5, 10日後にガス態(NO, N2O, N2)と溶存態(NO2-, NO3-)窒素の濃度・同位体比をGC/MSを用いて分析した。コントロールとして超純水に同様の処理を行い、土壌抽出液サンプルとの比較を行なった。
NO2-はpH 3でのみ減少し、NO2-変換の実際の基質とされるHNO2濃度をpHが決定することで、NO2-の非生物的な変換量を制御することが示唆された。酸性(pH 3)かつ酸素存在下ではNO2-はほぼ等量(94-97 %)のNO3-に変換され、酸性(pH 3)かつ無酸素条件では減少したNO2-の74-77 %がNO3-に変換された。酸素存在下ではHNO2の自己不均化または自己分解で生成するNOが蓄積せず、酸素はNOの消費を促進することで、NO2-の減少量とNO3-の増加量を制御すると推察された。酸素存在下と無酸素条件下で、それぞれ消費されたNO2-の0.01-0.39 %, 0.07-1.3 %がN2Oに、0.07-0.23 %, 0.10-0.58 %がN2に変換され、N2O, N2の双方で土壌抽出液成分によって生成が促進された。酸素条件に関わらずNO2-は主にNO3-に変換され、酸性土壌における硝化反応は、化学反応によっても生じる可能性が示された。


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