| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-459  (Poster presentation)

八甲田湿原における泥炭蓄積速度の環境依存性
Environmental dependence of peat accumulation rate in Hakkoda moorlands

*谷口快海(東北大学), 石井直浩(東北大学), 後藤亮仁(横浜国立大学), 河井勇高(東北大学), 巻島大智(横浜国立大学), 須藤瑠衣(横浜国立大学), 陶山佳久(東北大学), 佐々木雄大(横浜国立大学), 彦坂幸毅(東北大学)
*Hayami TANIGUCHI(Tohoku Univ.), Naohiro ISHII(Tohoku Univ.), Akihito GOTO(YOKOHAMA National Univ.), Yutaka KAWAI(Tohoku Univ.), Daichi MAKISHIMA(YOKOHAMA National Univ.), Rui SUTO(YOKOHAMA National Univ.), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.), Takehiro SASAKI(YOKOHAMA National Univ.), Koki HIKOSAKA(Tohoku Univ.)

 湿原では、土壌水分が多いことによる酸素供給の制限、低温による微生物活性の低下、植物遺体の放出する有機酸による土壌水分の pH 低下などの理由により、植物遺体の分解が制限されることで泥炭が蓄積する。これにより湿原は炭素貯蔵の面で重要な役割を果たす。泥炭の蓄積は環境要因の影響を受けると予想できる。泥炭の蓄積は、植物遺体の供給から分解量を差し引いたものと考えられる。植物遺体の分解は、上記のように低温・pH 低下などにより抑制される。このため、低温や低 pH である湿原程泥炭蓄積が多いという仮説を提起することができる。一方、生態系の生産力は温度や pH が高くなるほど大きいと期待される。生産力が高いほど植物遺体の供給量も高くなり、泥炭蓄積に寄与するという仮説も考えられる。温度や pH は泥炭蓄積に正・負どちらの効果を持つのだろうか。本研究では、青森県八甲田山の標高574m から1285m に点在する20の湿原を対象とし、泥炭蓄積速度の決定要因を明らかにすることを目的とした。八甲田山の湿原は既に土壌水分環境がそれぞれ異なることが明らかである。各湿原で辺縁部を避けた3点で採土器を用いて、泥炭コアを採取した。1,100年前の十和田火山による火山灰層を泥炭採取の深さの指標とした。また、純一次生産量の測定、さらに各湿原内の表層における土壌水の pH 、電気伝導度、土壌含水率、気温を測定した。本発表では、得られた結果から泥炭蓄積速度と地上部環境の関係性について議論する。


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