| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-461  (Poster presentation)

西日本温帯林に自生する 菌根菌の呼吸特性
Respiratory characteristics of mycorrhizal fungus in western Japanese temperate forest

*参輪佳奈, 大橋瑞江(兵庫県立大学)
*Kana Miwa, mizue Ohashi(University of Hyogo)

森林生態系の炭素循環において主要な経路である土壌呼吸は、根や土壌微生物など土壌中での生物活動で生じる二酸化炭素を発生源とするが、その一つに菌根菌の呼吸が挙げられる。菌根菌は、樹木の根に共生し、独自の炭素や養分の流れを生み出していることから、近年、炭素循環におけるその重要性が指摘されている。一般に菌根菌には様々な科や属が含まれ、これらはそれぞれの生活環の中で異なる組織や形質をもっていることから、菌根菌の呼吸は変動が激しく、土壌呼吸のばらつきを生み出す一因となっていると予想される。しかしながら、菌根菌の呼吸について、これまで分類群や形態の違いが生み出す変化を明らかにした例は見られない。そこで本研究では、野外における外生菌根菌が生み出す菌根菌呼吸のばらつきを、(1)子実体呼吸と菌糸呼吸の違い、(2) 異なる分類群における子実体呼吸の違い、(3)子実体の異なる部位における呼吸の違い、の3点に着目して明らかにした。兵庫県神戸市の再度公園、舞子公園、須磨浦公園において、2018年6月-7月、10月に子実体の採取を行った。採取した子実体の属を同定し、傘、軸、石突、石突直下の土壌、深さ0-4㎝の土壌、深さ4-8㎝の土壌に分けて呼吸の測定を行った。菌糸呼吸の測定は、1µmと50µmの二つのメッシュサイズの異なるイングロースバッグを用いて行った。同試験地で2018年2月-3月にイングロースバッグを設置し、11月に回収、呼吸を測定した。菌糸呼吸量は50µmのバッグから1µmのバッグのCO2濃度を差し引き、バッグ内菌糸量で割ることで求めた。子実体の呼吸は0.047±0.016(nmolCO2 mg-1 s-1)、菌糸の呼吸は0.013±0.014(nmolCO2 mg-1 s-1)となり、菌糸呼吸は子実体呼吸より小さかった。分類群によって比較したところ、テングタケ属が最も呼吸が高く、キヒダタケ属が最も呼吸が低かった。子実体の異なる部分における呼吸はほとんどの属で傘が最も高かったが、キヒダタケ属は軸が最も高いという結果が得られた。


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