| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-498  (Poster presentation)

クビワオオコウモリの遺伝的多様性解析
Genetic diversity analysis of the Ryukyu flying fox

*瀧雄渡, Christian E. Vincenot, 佐藤悠, 井上-村山美穂(京都大学)
*Yuto TAKI, Christian E. Vincenot, Yu Sato, Miho Inoue-Murayama(Kyoto Univ.)

コウモリ類は多様性に富んでおり、日本に生息する122種の哺乳類の内37種がコウモリ類である。本研究の対象種であるクビワオオコウモリは、琉球諸島、台湾のほか、フィリピン北部にも生息している可能性があり、分布域によってエラブオオコウモリ、オリイオオコウモリ、ダイトウオオコウモリ、ヤエヤマオオコウモリ、タイワンオオコウモリの5亜種に分類されている。クビワオオコウモリは主に果実や花蜜を餌として時には葉も食べる幅広い食性をもち、重要な花粉媒介者・種子散布者となっている。IUCN(International Union for Conservation of Nature)のレッドリストでは、VU(危急)に指定されているが、本種の遺伝解析はほとんど行われていない。本研究では、クビワオオコウモリの遺伝的多様性、島間の遺伝的分化や遺伝子交流を評価した。まず、ヤエヤマオオコウモリの生息する8島で採取した試料のミトコンドリアDNA(mtDNA)のハプロタイプを調べ、遺伝的多様性と遺伝的分化を調べた。合計142サンプルのmtDNAコントロール領域の526bpの塩基配列を得て、39種類のハプロタイプを同定した。その内14種類は複数の島間で共有されており、作成したハプロタイプネットワークでは島ごとの明確な遺伝的分化は見られなかった。これは、島間の個体の移動による遺伝子交流の結果である可能性が示唆された。一部のハプロタイプの分布には偏りがあり、遺伝構造が存在する可能性がある。そこで、個体識別を行って詳細な遺伝構造や遺伝子交流を調べるため、マイクロサテライトマーカーを開発した。次世代シーケンスによるショットガンシーケンスデータを基に50組のプライマーを設計し、それらをテストして多型性の高いマーカーを選別した。これらのマーカーをmtDNAの結果と合わせて解析し、保全に必要な詳細な多様性情報を得ることを目指した。


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