| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-001  (Poster presentation)

Habitat use of the crayfish Pacifastacus leniusculus in Nikoro River (Tokoro River system)

*Hiroshi MURABAYASHI, Ryosuke SUMIYOSHI, Kouki HACHIYA, Ryo YAMAZAKI(JRC Hokkaido Nursing Col.)

発表者は第65回生態学会で、北海道北見市仁頃川上流での特定外来生物のウチダザリガニ(Pacifastacus leniusculus,以下、ウチダ)の捕獲効率に関する発表を行った。しかし、仁頃川全域での分布は不明である。本研究では仁頃川全域において、前年の研究で最も捕獲効率が高い方法を用いて捕獲調査を行ったので報告する。
調査地は仁頃川と常呂川の合流点から1~5kmの間隔で、A、B、C、D、E、F、F´(追加1日のみ)、G、Hの9か所とした。調査期間は2018年9月25日~29日の5日間実施した。ウチダの捕獲には、罠としてスプリングモンドリと餌としてドッグフードを用いた。また、罠でウチダが捕獲された区間で蹴り込み法による追加調査を行った。地点間での捕獲数の差、混獲数の差、捕獲方法による差について、各種検定を用いて検討した。
ウチダの捕獲数はA、B、C、D、Eは0個体、Fで1個体、F´で8個体、Gでは8個体、Hでは23個体であった。捕獲数を地点ごとで比較すると、H地点はF地点と比較して有意にウチダの捕獲数が多かった(P < 0.05)。追加調査について、調査流域の平均捕獲数は、F下流・上流(0個体)、F´下流(0.27個体)、F´上流(0.47個体)、H下流(1.63個体)であった。
これらの結果は、仁頃川においてはウチダの密度は下流から中流では極めて低く、上流に向かうほど高くなることを示唆する。仁頃川はF´から下流はほぼ3面護岸されているため、ウチダの生息地として適していないと考えらる。Gから上流では、一部護岸された区域も存在するが、巨石、石、礫が河床を形成し、河岸は河畔林に覆われ、落葉が豊富であった。石、倒木、根の隙間は巣穴となり、落葉も幼若個体の隠れ家、餌ともなる。これらの条件により、Gから上流では、ウチダの生息に適した環境を提供していると考えられる。


日本生態学会