| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-020  (Poster presentation)

岡山市内の農業用水路におけるミナミメダカとカダヤシの棲息環境の選好性
Habitat preferences of Japanese medaka and mosquitofish in agriculture canals of Okayama city

*村上友康, 武山智博(岡山理科大学生物地球)
*Tomoyasu MURAKAMI, Tomohiro TAKEYAMA(Okayama University of Science)

外来種の侵入・導入は在来種の減少や絶滅の大きな要因の一つである。防蚊対策のため国内に導入されたカダヤシ(Gambusia affinis)は、在来種であるミナミメダカ(Oryzias latipes、 以下メダカ)に対し稚魚の捕食や鰭の損傷といった悪影響を及ぼす。先行研究によると国内ではメダカがカダヤシに置き換わった場所と、両種が共存する場所があるものの、その要因の一つである両種の微生息環境要因の解析は不十分である。そこで本研究では、両種の微生息環境を解明し岡山市におけるカダヤシの分布域拡大の可能性について検討した。2018年7月から12月にかけて月1回、岡山市南区南輝・浦安地区の農業用水路(20調査地点)においてメダカ、カダヤシの採捕及び環境要因を計測した。単位面積あたりのたも網による採捕数を個体数密度とし、各地点の環境要因[流速・pH・溶存酸素量・水温・濁度・水深・塩分濃度・植生被度・水田面積の割合(調査地点から半径50m以内)]と個体数密度の関係を単回帰分析にて解析した。また、カダヤシのメダカに対する影響を評価するため、両種の個体数密度どうしも同様に解析を行った。その結果、溶存酸素量・水温・濁度・塩分濃度・水田割合に短期的(1,2ヶ月)な相関関係が認められた。一方、数か月間にわたり有意な相関が認められたのは両種の個体数密度どうしの関係のみであったが、両種の個体数密度が高い1地点を除くとその関係は認められなくなった。以上の結果より、今回計測した環境要因の中に、両種の微棲息場所を決定する項目は認められず、両種間で微生息環境の差が小さいことが示唆された。また、両種の個体数密度どうしの関係からは、カダヤシのメダカに対する直接的な悪影響は認められなかった。今後カダヤシが岡山市内において分布を広げる可能性がある一方で、メダカに対するカダヤシの影響は認められないことから、メダカがカダヤシに急激に置き換わる可能性は小さいと推察された。


日本生態学会