| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-082  (Poster presentation)

野外の人工灯周辺におけるニホンヤモリの行動の連続的観察
Continuous observation of behavior of Gekko japonicus around the artificial light source in the field

*小林滉平, 森哲(京都大学)
*Kouhei KOBAYASHI, Akira MORI(Kyoto Univ.)

 人間の生活空間に生息する生物は、行動や形態形質などを変化させて自然環境とは異なる特有の環境に適応していると考えられている。ニホンヤモリ(以下、ヤモリ)は人家に生息し、夜間に隠れ家から出て人工光周辺に集まり、待ち伏せ型の採餌行動をとる様子がしばしば見られる。これは光周辺では餌資源が局所的に増加し、採餌成功が高まるために生じた、都市環境に適応した行動と考えられている。しかし、野外の人工光周辺での同一個体の行動を、日を追って継続観察した例はほぼ無い。本研究ではヤモリにおける同一の人工光環境の利用頻度を評価することを目的として、光周辺の利用の反復性、及び一晩で待ち伏せ行動をとる割合を調べるために連続数日間の野外調査を行った。調査は京都府南丹市芦生研究林で7~8月の5日間行い、夜間に人工光のある2カ所でヤモリが一晩にどのような行動を示すかを定点カメラで日没から日の出まで撮影して調べた。各場所で6~7個体をマークして識別を行い、映像から各個体の出現時間やその地点、行動範囲、移動と静止の時間等のデータを抽出して調査日や個体の間で比較した。
 その結果、光周辺への出現頻度や時間は個体毎に異なり、必ずしも毎日利用してはいないことが分かった。同一個体の光周辺での行動範囲は調査日によって大小はあったが、その範囲には重複が見られ、同じ夜に光周辺と暗所や隠れ家を複数回往復する場合でも利用範囲は類似した。また、暗所から光周辺に出入りする地点も類似したことから、自分の利用範囲をある程度空間的に記憶している可能性が考えられる。また、ヤモリの「出現時間中の移動時間率」は基本的に15%未満となり、待ち伏せ型の採餌行動をとると言えるが、探索型の採餌行動もとるケースも一部見られた。本研究より、人工光環境でのヤモリの利用エリアや採餌様式は個体内でほぼ安定しているが、日や状況に応じてそれらを変える場合もあることが示唆された。


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