| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-103  (Poster presentation)

日本産ヒシ属植物集団の遺伝的多様性に関する研究
Genetic diversity of Trapa (Lythraceae) populations in Japan

*山岸洋貴(弘前大), 片岡太郎(弘前大), DinhThi Lam(岩手連大), 石川隆二(弘前大)
*Hiroki YAMAGISHI(Hirosaki Univ.), TAROU KATAOKA(Hirosaki Univ.), Thi Lam Dinh(UGAS), RYUJI ISHIKAWA(Hirosaki Univ.)

ヒシ属植物は一年生の浮葉植物で、日本列島に広く分布する代表的な水生植物である。国内には在来3種(ヒシ、オニビシ、ヒメビシ)と移入種のトウビシが生育し、この中で最も広く分布するヒシは、種子形態などに多様な種内変異が観察される。このヒシは、オニビシ、ヒメビシの種間交雑由来であることが示唆されており、この多様な種内変異獲得にはその交雑過程を反映していることが推測される。ヒシの種および集団成立過程を解明することは日本列島における湖沼生態系の変遷を知る上でも重要である。しかし、既知の遺伝マーカーのみでは、この形成過程を明らかにすることは難しく、これらの解明には情報量が多いマーカーの開発が必要であった。そこで新たな遺伝マーカーを開発し、これらを用いてヒシ属植物間の系統関係や系統地理的な遺伝構造の解明することを目的に研究を進めてきた。まず日本に自生するヒシ属植物の葉緑体DNA塩基配列を、次世代シークエンサーを用いて明らかにした。得られた配列情報を基に挿入・欠失(Indel) 部位を探索し、この変異情報を利用するIndelマーカーを開発した。今回、新たに開発されたIndelマーカーのうち8つを利用して日本列島におけるヒシ集団の遺伝的多様性および系統地理的な遺伝構造を明らかにすることを試みた。これまで解析には北日本を中心にヒシ22集団、またオニビシ3集団、ヒメビシ5集団を用いて葉緑体タイプを決定し、遺伝的多様性の評価やハプロタイプネットワークを明らかにした。ここまでの結果、日本列島に広く分布するハプロタイプが存在することや同一集団内や局所的なスケールに存在する集団間にも複数のハプロタイプが混在することなどが明らかになった。今後、集団数を追加しながら更に詳細な遺伝構造や成立過程の解明を行う予定である。


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