| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-125  (Poster presentation)

日中および夜間の生育温度上昇に対するヤエヤマヒルギ実生の形態的・生理的変化
Morphological and physiological responses of Rhizophora stylosa seedlings to increased day and night temperatures

*赤路康朗, 井上智美(国立環境研究所)
*Yasuaki Akaji, Tomomi Inoue(NIES)

温暖化は植物の生理的プロセスの変化を通じて植物の成長や形態に影響を及ぼすことが知られており、近年、熱帯や亜熱帯域に生育する植物に対しても温暖化影響の関心が高まっている。熱帯や亜熱帯域の汽水域にはマングローブ植物という特殊な環境に適応した植物が生育しており、マングローブ林は様々な生態系サービスを持つことから重要な生態系として位置づけられているが、温暖化がマングローブ植物の生育に及ぼす影響について検証した研究例はほとんどない。そこで本研究では、日中と夜間の気温上昇が有用植林樹種であるヤエヤマヒルギの生育に及ぼす影響を評価することを目的とした。西表島からヤエヤマヒルギの胎生種子を採取し、温室で生育させた当年生実生を実験に用いた。実験では、種子採取地の夏季の平均気温を参考にしたコントロール区(C区:日中31℃・夜間28℃)と温暖化を想定した3つの処理区(T1区:日中31℃・夜間30℃、T2区:日中33℃・夜間30℃、T3区:日中33℃・夜間32℃)をそれぞれ自然光キャビネットで設置し、42日間、10個体ずつ生育させた。生育4週目以降にT3区の個体で落葉が進行し、42日目では3個体が全ての葉を落としていた。結果として、T3区の個体の相対成長速度(g g-1 day-1)は他の温度環境の個体よりも低く、日中と夜間の気温上昇の交互作用効果が認められた。3週目に測定した最大純光合成速度(μmol m-2 s-1)は、T2区とT3区の両方の個体で低下しており、最大量子収率(Fv/Fm)はT3区の個体でのみ低下していた。加えて、T2区とT3区の個体は根の乾燥重量が低く、シュート/地下部比がC区やT1区の個体よりも低い傾向がみられたことから、温暖化に応じて形態も変化することが示唆された。以上の結果と呼吸速度等の結果を合わせて、ヤエヤマヒルギに対する温暖化影響を検討した。


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