| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-126  (Poster presentation)

土壌水分制限下におけるカバノキ属3種の成長と生存率,葉のフェノロジーの変化
Development and survival of leaves in Betula trees under soil water deficit

*田畑あずさ, 小野清美, 隅田明洋, 原登志彦(北大・低温研)
*Azusa Tabata, Kiyomi Ono, Akihiro Sumida, Toshihiko Hara(ILTS. Hokkaido Univ.)

 植物が乾燥ストレスによって落葉することは,葉の生理的特性や根系の可塑性による応答以外の,乾燥に対する適応的応答の一つである可能性がある。葉のサイズや寿命を変えることで乾燥ストレスに対応するかどうかを調べるため,寒冷圏の落葉広葉樹のうち,生育地の異なるカバノキ属3種(ダケカンバ Betula ermanii,シラカンバ B. platyphylla var japonica,ウダイカンバ B. maximowicziana)の苗木を用い,乾燥がカバノキ属樹木の成長,光合成能力,葉の生存等へ及ぼす影響を調査した。
 乾燥条件下において,ダケカンバの積算展葉数は減少しなかったが,平均個葉面積は低下したため,個体あたりの葉面積が灌水条件下より大きく低下した。シラカンバでは,個体あたりの積算展葉数や着葉数が大きく減少し,個体あたりの葉面積も低下した。一方,ウダイカンバでは2種のような変化は見られなかった。このような乾燥に対する応答の種間不一致は,成長速度や光合成に関する結果にも見られた。ダケカンバでは乾燥条件下において,幹体積のRGR(相対成長速度)や光合成関連の性質に灌水条件下との違いは見られなかった。一方,シラカンバではRGRが低く,光合成速度や気孔コンダクタンスも低下した。ウダイカンバにおいても RGRの低下が見られ,光合成機能には乾燥による違いが見られなかったが,生育期間中に乾燥条件下のすべての個体が枯死した。
 以上の結果から,ダケカンバの葉数を減らさずに個葉面積を小さくする応答や,シラカンバの葉数を減らす応答は,葉レベルでの個体の枯死を防ぐための乾燥に対する適応方法であることを示唆している。一方,ウダイカンバは2種に比べて乾燥に対応する能力が低いと考えられる。これらの同属でありながらも乾燥に対する異なった応答は,3種のカバノキ属の生育地を決定する要因の一つであると考えられる。


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