| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-143  (Poster presentation)

種内変異を利用した高CO2下成長促進遺伝子の探索 【B】
Utilization of intraspecific variation to search for candidate genes which stimulate the growth rate in elevated CO2. 【B】

*小口理一(東北大学), 花田耕介(九州工業大学), 彦坂幸毅(東北大学)
*Riichi OGUCHI(Tohoku University), Kosuke Hanada(Kyushu Institute of Technology), Kouki Hikosaka(Tohoku University)

 産業革命以降、人間活動によって大気中のCO2濃度は上昇を続けており、100年後には現在の2倍の濃度に達することが予想されている。CO2濃度の上昇は光合成の基質を増やすため、短期的には植物の成長を向上すると予想されるが、これまでの研究で、長期的な応答における成長の促進率は植物によって大きく異なり、成長が促進しない植物も存在することがわかってきた。
 将来の高CO2環境における植物の成長促進率の差に関わる遺伝子はどのようなものだろうか?これを明らかにすることは、将来の高CO2環境でどのような植物が有利になるかの予測や、生産性の高い植物の育種につながる。
 私たちは、世界中の様々な場所で見られるシロイヌナズナについて、それぞれの場所に適応する中で生じた形質のばらつきによって、高CO2応答に差が出るのではないかと考えた。実際、私たちは先行研究で、世界中の様々な場所に適応したシロイヌナズナエコタイプ間で、成長速度の高CO2応答に有意なばらつきがあることを示した(Oguchi et al. 2016 Oecologia)。これは、このシロイヌナズナエコタイプ間で、高CO2での成長促進率に関わる遺伝子に何らかの変異が生じているためと考えられる。
 本研究は、世界各地で集められたエコタイプの高CO2応答のばらつきの中から、高CO2での成長促進率に関連する遺伝子を探索することを目的とした。ゲノム関連解析および異なるCO2濃度での生育における発現量解析のデータから、43の遺伝子を高CO2応答関連遺伝子として選抜した。そして、実際にそれらの遺伝子の発現量を変化させた形質転換体のうち、3つの形質転換体において高CO2環境で野生型よりも生育速度が高いことを確かめた。


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