| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-146  (Poster presentation)

多雪地山地の急傾斜地における灌木2種の幹の特性とストレス
Mechanical stress and property of the trunk for two low-tree species on an steep slope in a heavy snowy mountain

*宮下彩奈(森林総合研究所), 松元高峰(新潟大災害復興科学研), 河島克久(新潟大災害復興科学研), 勝島隆史(森林総合研究所)
*Ayana MIYASHITA(Forestry&ForestProdResInst), Takane Matsumoto(ResInstNatHazard&DisastRecov), Katsuhisa Kawashima(ResInstNatHazard&DisastRecov), Takafumi Katsushima(Forestry&ForestProdResInst)

本研究では、降雪期間中に斜面の灌木がうける変形量のパターンを斜面積雪の動態と関連付けるとともに、これらの幹の破壊の危険性を明らかにした。
観測は、大白川駅(新潟県)付近の山林で行った。平均斜度36°の調査地において直径3.6-6.3 cmのマンサクおよびヒメヤシャブシ各4本を選び、それぞれ幹の根元付近に1対のひずみゲージを貼って30分間隔で測定値を記録した。同時に、近隣の場所で積雪深や積雪移動量のモニタリングを行った。また、同じ個体を用いて現地で引張荷重試験を行い、根元付近のヤング率を推定した。その後、幹を伐採し、3点曲げ試験によるヤング率・比例限度応力・最大応力の測定を行った。
幹は降雪期間の初期に冠雪によって大きく変形した。その後、マンサクでは値がほぼ横ばいになり、ヒメヤシャブシでは増加傾向がみられた。前者は冠雪時にほとんど接地するまで倒伏し、後者は完全には倒伏せず、その後、積雪深の増加等にともない徐々に倒伏していったと考えられる。積雪グライドがスタートしてからは幹のひずみは不安定化したが減少傾向をみせ、雪崩の発生後は速やかにゼロ付近に戻った。このことから、降雪期の初期~積雪深最大の頃までが最も変形ストレスの大きな時期で、積雪が移動を始めるとむしろ解放されるといえる。ただし幹のより先端の方や枝葉は積雪移動によるダメージをうける可能性がある。今回測定対象とした2種はヤング率や樹形も異なった。マンサクは幹のヤング率はより小さく、樹形は大きく湾曲していた。ヒメヤシャブシはより鉛直方向に立ち上がった樹形で、幹のヤング率はマンサクより大きかった。幹の変形量の最大値は、マンサクでは比例限度応力、ヒメヤシャブシでは最大応力に近い力が加わったことを示唆している。これらの結果から、マンサクの方が地面に倒伏しやすい形状でストレスを避け、より多雪地斜面に適応していると考えられる。


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