| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-201  (Poster presentation)

市民参加によるカヤネズミの生息地保全―京都府立木津川運動公園における取組み
Habitat conservation of the harvest mouse by citizens participation - Efforts in the Kyoto Prefectural Kizugawa athletic park

*畠佐代子(カヤネット)
*Sayoko HATA(Kaya-Net Jp)

 京都府立木津川運動公園において,京都府準絶滅危惧種のカヤネズミの生息地保全と,市民の草地の生物多様性保全の意識啓発を目的として,2016~2018年に市民参加による草地保全の取組を実施した.
 植樹地内にオギが混在する草地(保全区1,約20×20m)において,毎年4月上旬に地表部の刈取りを行い,4月下旬と6月上旬にセイタカアワダチソウとツル植物の除去を行った.除去効果の検証のため,2×2mの方形区を保全区1に4カ所,保全区外(無管理区)に2カ所設置し,4~11月に月1回,オギの草丈,出現植物の種類と被度を記録した.また水辺のオギ小群落(直径約2m)を含む草地(保全区2,約5×5m)において,毎年12月頃に地表部の刈取りを行い,経過を観察した.保全区1の除去作業と植生調査の一部は,市民講座(4,6,9,10月開催)のプログラムとして実施した.
 いずれの調査年も,4月のオギの被度は,保全区1と無管理区とも20~30%台であったが,6月の除去作業後は,保全区1では11月まで60~70%台で推移したのに対し,無管理区ではツル植物の勢いが強くなり,オギの被度は20~50%台で推移した.セイタカアワダチソウの被度は,保全区1では5%以下を保ったが,無管理区では2016年7.5~16.5%,2017年9.5~29.3%,2018年9.3~34%の範囲で推移した.保全区2のオギ群落は,2017月に直径約4mに拡大し,付近に新たな小群落が出現した.2018年には元の群落は直径約8mに拡大し,さらに2カ所目の新たな小群落が出現した.保全区内のカヤネズミの巣は2016年に9個,2017年に20個,2018年に9個確認した.
 市民講座の参加者は,2016年95名,2017年73名,2018年93名であった.2年目以降は,受講経験者が初心者に調査方法や植物の見分け方を教えるなど,積極的に活動に取り組む姿勢が見られた.
 本取組は,来年度も引き続き行う予定であり,市民が継続的に草地保全活動に参加することにより,身近な生きものへの親しみや,生息地の保全への理解が深まることが期待できる.


日本生態学会