| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-214  (Poster presentation)

大峯山の異なる標高帯におけるニホンジカ撮影頻度の季節変動
Seasonal variation of  relative abundance index of sika deer in different elevation in Mount Omine

*辻野亮, 深川幹(奈良教育大学)
*Riyou TSUJINO, Motoki Fukagawa(Nara Univ Edu)

奈良県南部に位置する大峯山弥山周辺 (1,683~1,889 m) と前鬼周辺 (924~1,109m) に,2014年5月から複数台のカメラトラップを設置して中・大型哺乳類相の撮影頻度指数RAI (Relative abundance index, 撮影頻度指数 = 撮影頭数/100カメラ日) を調査した.前鬼は2014年8月から2017年10月までのデータ,弥山は2014年5月から2017年9月のデータを用いた.
前鬼では,2014年から2017年にかけて3,245日の稼働日数で,種不明の哺乳類を除いて11種1,089頭の哺乳類が撮影された.RAIではニホンジカが最も大きく (23.5),イノシシ (4.7) やニホンザル (2.1),テン (1.6) が続いた.弥山では,5,801日の稼働日数で,種不明の哺乳類を除いて10種1,686頭の哺乳類が撮影された.RAIでは,ニホンジカが最も大きく (26.6),アカギツネ (1.1) やニホンノウサギ (0.5),リス (0.3) が続いた.
最も撮影されたニホンジカに関して弥山では,冬期はRAIが0に近く,5~7月に高くなり,8~10月にかけて減少する.前鬼では,1月から7月くらいまでRAIが低く,8~10月に高くなり,11~12月になると減少した.標高の高い弥山では,初夏の新緑の季節に低地からニホンジカがやってきて採食し,繁殖期が始まる9月に先駆けて山を下り,標高1,100 mくらいの前鬼では9~11月の繁殖期にかけてニホンジカが一時的に集まるが,それ以外の時期はそれほど生息していない.
これらの調査結果から,弥山と前鬼は距離が離れているので直接ニホンジカが行き来するわけではないが,大峯山に生息するニホンジカは,初夏に高標高の亜高山帯針葉樹林に登って採食し,9月頃標高が中程度の落葉広葉樹林帯に移動し,12月から翌年4月まではさらに標高の低い地域で生息していると考えられる.


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