| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-228  (Poster presentation)

気候と地形に基づいた天然林の構造発達過程の空間明示型実証モデル 【B】
A spatially explicit empirical model of structural development processes in natural forests based on climate and topography 【B】

*山浦悠一(森林総合研究所, オーストラリア国立大), LindenmayerDavid(オーストラリア国立大), 山田祐亮(森林総合研究所), GongHao(森林総合研究所), 松浦俊也(森林総合研究所), 光田靖(宮崎大学), 正木隆(森林総合研究所)
*Yuuichi YAMAURA(FFPRI, ANU), David Lindenmayer(ANU), Yusuke Yamada(FFPRI), Hao Gong(FFPRI), Toshiya Matsuura(FFPRI), Yasushi Mitsuda(Univ Miyazaki), Takashi Masaki(FFPRI)

森林の構造は林齢とともに発達し、構造が発達した老齢林は多くの種を支えている。本研究では、北米西海岸で開発された老齢林インデックス(old-growth index)の概念と手法を応用し、日本の森林の構造の発達速度を気候と地形の関数としてモデル化した。階層ベイズモデルを用いることによって、比較的短期間で収集され、プロット間で林齢の異なる森林生態系多様性基礎調査(national forest inventory「NFI」)の毎木データを解析した。その結果、複数の森林構造変数とその合成変数である老齢林インデックスの発達速度は、環境共変量に対して非線形な反応を示した。特に平坦な場所で高い発達速度を示した。高い老齢林インデックスの値を達成するためには、おおよそ100年以上必要とされると推測されたが、具体的な値は環境条件によって異なった。モデルを茨城県北部に当てはめたところ、森林の潜在的な発達速度は地域内で空間的に異質に分布することが示された。NFIデータは、150年生を超えてくる古い天然林は雪が多く寒冷な地域に偏って分布していることを示した。平坦な場所での高齢な天然林の維持再生は、その発達速度の高さから、生物多様性の保全上重要である一方で、非生産的な場所に残存する天然林も同様に重要であり続けるだろう。


日本生態学会