| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-303  (Poster presentation)

タンザニアの疎開林地帯に生息する霊長類の採食物とその特徴
Characteristics of primate diet in savanna woodland of the Ugalla area, Tanzania

*吉川翠(国立科学博物館), 小川秀司(中京大学), 伊谷原一(京都大学)
*Midori YOSHIKAWA(Nat.Museum of Nature & Science), Hideshi OGAWA(Chukyo University), Genichi IDANI(Kyoto University)

タンザニアの疎開林地帯(05°13.0’S,30°27.5’E)で,チンパンジー(Pan troglodytes)とヒヒ(Papio cynocephalus/P.Anubis)の採食物を,糞分析を中心に直接観察を併用して調べた.糞はチンパンジーで465個,ヒヒで196個収集し,採食物と各食物の出現頻度を求めた.チンパンジーとヒヒの採食物の内,頻繁に採食していた果実は,その樹種1本辺りの落下果実の数と総重量を,草本果実は群落サイズを調べた.またそれら植物の分布を調べた.
 結果,チンパンジーは植物100種(117品目),鳥類1種,哺乳類1種,昆虫3種を採食し,ヒヒは植物26種(27品目),哺乳類1種,昆虫2種を採食していた.ヒヒの採食樹種25種はチンパンジーも採食していた.採食樹種の内,Parinari curatellifolia 1本辺りの落下果実は他の樹種に比べて,個数で5~45倍,総重量で14~1055倍であった.本地域のチンパンジーは平均3.3頭(1~12頭) ,ヒヒは33.3頭の集団で遊動する(Yoshikawa&Ogawa 2015).P.curatellifolia 以外の樹種は果実量が少ない上に点在していることから,ヒヒのような大きな群れが一度に充分な量を採食するのは難しいであろう.一方,果実量が多かったP.curatellifoliaと,群落サイズが大きかった草本果実 Aframomum spp.は大きな群れでも採食可能である.疎開林地帯では熱帯雨林帯よりも樹種数が少なく,霊長類間の採食競合も起こるが,果実量が多い樹種に支えられ,また点在する樹種を遊動しながら採食していると考えられた.本研究ではヒヒの採食物が他地域に比べ少なかったが,これは収集した糞の数が不十分であったことや,採食可能食物が限られていた等の影響が考えられる.更なる研究の必要がある.


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