| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-342  (Poster presentation)

状態空間モデルを用いた北海道日本海側の秋サケ来遊資源変動の推定について
Stock assessment of chum salmon in the coastal area of Hokkaido in the Sea of Japan using state-space models

*飯嶋亜内(北海道立総合研究機構)
*Anai IIJIMA(Hokkaido Res. Org.)

 北日本において秋の重要な漁業資源であるサケは人工種苗の放流によって維持されており、北海道では道内を14地区に分けて資源管理が行われ、資源評価には地区内の沿岸漁獲数と河川遡上数を足し合わせた来遊数が用いられている。本種は主に3-6年魚(母川回帰時に満3-6歳)で回帰し、ある年に来遊するt年魚の資源量は、生まれ年が同一で翌年に来遊するt+1年魚の資源量との間にシブリング関係(t年魚が多いと翌年にt+1年魚が多い)を示すため、人工種苗の採卵に供する河川遡上親魚の確保を目的とした来遊予測では、各地区のt年魚の来遊数から翌年のt+1年魚の来遊数が推定されている。しかし、各地区の沿岸漁獲数は自場河川への回帰資源であることを前提としているが、実際には他地区への回帰資源が多分に含まれている。また本種の北海道での漁獲量は2000年代半ばをピークとして明瞭な減少傾向を示すと共に、シブリング関係も時系列的に変化しており、これらが資源評価や来遊予測の課題となっている。
 「直接観測できない事象の状態」を記述するシステムモデルと事象の状態の観測過程で得られる「観測値」を記述する観測モデルにより事象の状態変化を表現する手法である状態空間モデルを適用し、サケ資源動態の推定方法について検討することを研究目的とした。本研究では1986-2018年に回帰した北海道日本海側の3地区 (北部、中部、南部)の年齢別の来遊数を使用し、各地区の直接観測できない事象の状態(資源状態)をシステムモデル、観測値(来遊数)を観測モデルにより時系列的に記述し、資源状態が前時点の資源状態に依存して変動する階層モデルを構築した。マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いたベイズ推定によりモデルのパラメータ推定を行い、推定した来遊数と実際の来遊数を比較し、推定した資源動態について議論した。


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