| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-346  (Poster presentation)

河道内氾濫原はカエル類の有効な生息場所となるのか?—木曽川水系での検討―
Frog communities in floodplain water bodies of the Kiso River system

*田和康太(土木研究所河川生態), 永山滋也(岐阜大学流域圏科学), 中村圭吾(土木研究所河川生態)
*Kota TAWA(PWRI), Shigeya NAGAYAMA(Gifu University), Keigo NAKAMURA(PWRI)

 河道内湿地のカエル類に対する生息場所としての効果を検討するため,2018年の6月中旬に,木曽川と長良川の河道内氾濫原水域(以下,河道内湿地)と周辺の水田において,カエル類の生息・繁殖状況を比較調査した.
 河道内湿地12か所と堤防を隔てて立地する水田12枚を調査地とした.各調査地において,日中にカエル類幼生を対象とした掬い取りと,成体・亜成体を対象としたラインセンサスを実施した.また,日中調査実施日の夜間には,カエル類オスが繁殖期に発する広告音の聞き取り調査を行った.
 調査の結果,水田では,ヌマガエル,ニホンアマガエル,ナゴヤダルマガエル,トノサマガエルの4種が記録された.河道内湿地では,ヌマガエル,ニホンアマガエル,ナゴヤダルマガエル,ニホンアカガエル,ツチガエル,そして特定外来種であるウシガエルの計6種が記録された.水田では,河道内湿地に比べて顕著に幼生,亜成体,成体の個体数が多かった.また,広告音を上げているオス個体数も顕著に多かった.特に,ニホンアマガエル,ヌマガエル,ナゴヤダルマガエルの3種は,水田を主な生息・繁殖場所としていることが示された.河道内湿地では,ウシガエルの出現頻度が最も高く,幼生の採集や広告音の大きさから,多数の調査地で繁殖しているものと推察された.その一方で,個体数や出現地点数はわずかだったが,水田で全く記録されなかったツチガエルやニホンアカガエルが,河道内湿地のみに出現した.これらは,水田の非灌漑期にも,越冬や産卵のために水域を必要とする種であり,河道内湿地が両種の重要な生息場所になっていると考えられた.さらに,高水敷にある浅い河道内湿地では,ヌマガエルやニホンアマガエルが繁殖していたことから,比高や水深等の条件によっては,河道内湿地も,水田を主な生息場所とするカエル類に利用される可能性が示唆された.


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