| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-453  (Poster presentation)

シバ草原の土壌撹乱が植物種多様性の回復にもたらす効果
Effectiveness of soil disturbance in Zoysia japonica grassland on restoration of plant species diversity

*野田顕, 加藤大輝, 西廣淳(東邦大学)
*Akira Noda, Daiki Kato, Jun Nishihiro(Toho Univ.)

日本における草原の植物種多様性は、全国的な草原の消失に伴い急速に低下している。一方で多様性の低いシバ優占の草原としてゴルフ場は全国各所にある。本研究では、ゴルフ場のようなシバ草原を多様性の高い草原に再生する可能性を検討するために、強度の異なる土壌撹乱による植物種組成への影響を調べた。

千葉県白井市のシバ優占草原において、深い撹乱区・浅い撹乱区・対照区の3つの撹乱処理区を設けた。土壌撹乱は2017年5月に行った。処理区を開空部と林縁部の2つの小区画に分け、各小区画において全体の植被率、植生高、植物種名、植物種ごとの被度を記録した。調査は2017年と2018年に行った。土壌水分含有率、土壌硬度、開空率の環境条件も小区画ごとに測定した。同地域に存在する多様性の高い草原を参照区として、処理区の種組成や環境条件と比較を行った。種組成の解析はNMDSを利用した。

環境条件について、対照区の土壌硬度および土壌水分含有率は参照区と同程度だったが、土壌撹乱処理ではともに低下していた。また、参照区の開空率は3処理区と比べて有意に低かった。シバ優占草原における草原性植物は2年間で33種の出現が確認された。撹乱区ではスズメノヤリ、対照区ではヌスビトハギの出現頻度が顕著に少ないという特徴は見られたものの、3処理区ごとの草原性植物の出現頻度は、上位10種のうち9種が共通しており、全体として植物種組成は類似していた。2年目における土壌撹乱処理区の種組成は、1年目の種組成よりも参照区に近づいた。2年目の時点では、土壌撹乱の強度は草原性植物の種組成に明瞭な違いをもたらさないことが明らかになった。しかし、時間の経過と共に種多様性の高い草原になる可能性が示唆された。


日本生態学会