| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-468  (Poster presentation)

シマゲンゴロウ個体群に農法と餌資源量が与える影響
Effects of farming practices and prey abundance on populations of Prodaticus bowringii

*渡辺黎也, 横井智之(筑波大・保全生態)
*Reiya Watanabe, Tomoyuki Yokoi(Tsukuba Univ.)

一般に、捕食性昆虫の個体群サイズは餌資源量によって制限される。特に、ゲンゴロウ類は幼虫期に高い餌選択性を示すため、幼虫期に摂食する餌生物の量が個体数の増減に影響しやすい。また、ゲンゴロウ類の個体数に対して、農薬使用を含む慣行農法による影響が指摘されているが、検証は行なわれていない。シマゲンゴロウは、水田や堀上などの稲作水域に生息するゲンゴロウ科の一種である。本種は個体数の減少が著しく、環境省RLにおいて準絶滅危惧種に選定されているが、減少要因は未解明である。個体群維持には、幼虫期の生存や成長に重要な餌生物を明らかにするとともに、農法による影響を検証する必要がある。本研究では、本種個体群の減少要因の解明を目的として野外調査を行なった。
幼虫期の食性を明らかにするために、2018年5月~8月に茨城県石岡市の水田2枚において調査を行なった。夜間に畔を歩き、幼虫および捕食していた餌を直接観察した。幼虫の体サイズの指標として頭幅を記録し、餌の同定および体幅の測定を行なった。併せて、週1回の掬い取りにより餌生物の季節消長を調査した。その結果、幼虫は個体数のピーク時期が重複するカエル幼生を主な餌資源としており、中でもアマガエル幼生を多く捕食していた。
本種の個体数に農法と餌資源量が与える影響を調べるために、2017年4月~9月に月2回、つくば市近郊の環境保全型水田8枚と慣行水田8枚において掬い取り調査を行ない、本種(幼虫・成虫)と餌の個体数を記録した。一般化線形モデルによる解析の結果、カエル幼生の個体数が多い水田ほど本種の個体数は多かった。また、慣行水田ではカエル幼生の個体数が減少したことにより、間接的に本種の個体数が減少していることが示唆された。以上より、シマゲンゴロウ個体群の維持には環境保全型農法が有効であり、カエル類の生息環境の整備も重要であることが示された。


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