| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-01  (Poster presentation)

水害に適応する稲の研究
Research of the rice which is adapted for flood damage

*前田彩花(清心女子高等学校)
*Ayaka Maeda(Seishin Girls' High School)

 植物の水やりは朝方行う方が良いという事は一般的に良く知られている。その理由として、例えば夏場の日中に水やりを行った場合、高温の水により根が煮えてしまうことなどがあげられている。逆に冬場の場合は、早朝に水やりをすることで低温ストレスにより根が傷むので、日が昇り始める頃に与える方が良いと言われている。このように水やりの最適な時間については気温が大きく影響しているが、気温等の環境要因を一定にした場合、いつ水やりを行うのが最適かについて明らかにするために、植物の吸水リズムについて調査することにした。
 研究対象としては水稲(岡山県産あけぼの)を用いた。収穫して半年以上経過し、乾燥させた籾を赤玉土上に撒き、たっぷりと水を与え、温度25℃に設定したインキュベータ内で発芽させた。約1週間後、15㎝程度まで成長した苗を実験で用いた。
 水を入れた試験管(直径1㎝、深さ10㎝)に苗を入れ、横から赤外線Webカメラで水の減少量を定期的に記録した。インキュベータ内の温度は25℃、光周期は明期:暗期=12時間:12時間に設定した。そのまま約5日間記録を続け、得られた記録写真から各時間の水分の減少量を測定し、吸水リズムをグラフ化した。
 結果より、明期は水の吸水量が著しく多く、逆に暗期はあまり吸水していないことが明らかとなった。温度は一定であることから、これは明暗周期に同調した結果だと考えられる。特に明期に吸水量が増加した要因として、光照射により蒸散が促進されたためだと考えられた。現在はその考察を確かなものとするために、光周期を変えることで吸水リズムがどのように変化するかについて調べるとともに、蒸散具合を変化させることで吸水リズムがどのように変わるかについて調査を行っている。また、吸水の仕組みについてより詳細に調べるために、根に含まれるアクアポリン遺伝子の発現リズムについて実験を行うことを検討している。


日本生態学会