| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-39  (Poster presentation)

ハエトリグモの捕食行動
Predatory Behavior of The Jumping Spider

*衛藤聡太, 合田楓(大分舞鶴高等学校)
*Souta Eto, Kaede Gouda(Oitamaizuru H.S.)

人家にも生息しているハエトリグモは、複数の大きな眼を持つ体長8㎜の小さなクモである。餌を捕獲するための網を張らず、餌に近づき直接飛びついて捕獲する。その捕食行動に興味を持ち、捕食行動を引き起こす刺激の要因と捕食行動のメカニズムを解明することを研究の目的とした。日本全土に生息するアダンソンハエトリ45個体を研究材料とし、振動刺激や化学刺激を排除したパソコンのモニター画面上に設定した様々な条件の動く図形に対する反応実験を行い、ハイスピードカメラで撮影した捕食行動を分析した。実験結果から、ハエトリグモの捕食行動は、動く物体からの視覚刺激によって引き起こされ、イエバエ程度の大きさの黒い物体が視野を横切る場合によく反応することが分かった。しかし、物体の彩度や形の変化に対する反応の違いは小さく、動く速さには万能性があったことから、多種類の昆虫を捕食の対象とする能力を持つと考えられた。その行動パターンは、餌となる物体の「認識」、2つの前中眼で餌を捉える「定位」、餌に気付かれずに近づくための「接近」と「静止」、ある程度まで近づくと跳躍して「捕獲」、顎で餌の胸部付近にかみつく「捕食」の順に行われていた。さらに、行動分析から、ハエの幼虫と成虫とでは、定位した距離、捕獲までの静止回数、捕獲時の跳躍距離が異なっており、ハエトリグモは捕食する昆虫の種類に対応した捕食行動を行うと考えられた。4対の歩脚については、第一脚および第二脚は捕食時に餌の昆虫を捉えて動きを止め、第三脚は転節と腿節の曲げ伸ばしによって餌に向かって跳躍し、第四脚は捕食時にからだを地面に固定する役割があることを明らかにした。また、それぞれの歩脚の先端にある2本の爪は、第一脚と第四脚が鎌状、第二脚と第三脚が櫛状であり、垂直面を上下に移動する際に機能的にはたらく構造であることが分かった。


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