| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-73  (Poster presentation)

地中トラップで得られた節足動物群集
Arthropod assemblages collected by subterranean bait traps

*脇村涼太郎(兵庫県立相生高等学校)
*Ryotaro Wakimura(Aioi High School)

地中深くには様々な生物が生息する。ガロアムシ類やチビゴミムシ類、オビヤスデ類のようなグループの生物では、目が退化するなどの形態的な特殊化を伴っており、地下にのみ生息していると考えられる。一方で、アリ類やトビムシ類のような生物は、地表から地中まで幅広い深さに生息していると考えられる。このことから幅広い深さに生息する生物を介して、地表と地中という2つの生態系は相互に影響していると考えられる。このような2つの生態系の繋がりを評価する上では、それらの生物が、地表からの深さによってどのように分布しているかを定量的に比較する必要がある。しかし、幅広い地中環境での動物相の調査は困難であり、定量的な調査を行った研究は少ない。本研究では、地中にベイトトラップを設置し、地中で得られる節足動物相の定量的な調査を行った。調査は2018年4月から8月にかけて、兵庫県佐用郡佐用町と相生市矢野町に合計13基のトラップを設置して行った。佐用郡では、深さによる節足動物相の比較のために地表から30 cm(浅)と45 cm(深)の2段階の深さにそれぞれ5基ずつトラップを設置し、調査を行った。調査の結果、計6綱13目24科45種3471個体の節足動物が採集された。トラップの深さによって分類群を比較すると、深いトラップでは、地中性種(目を失うなどの形態的に特殊化した種)の種数と個体数が多かった。また、浅いトラップでは深いトラップよりも地表性種(地中性以外の種)の個体数が多かった。ただし、深さによって種構成はあまり変化しなかった。このことから地表性種が生息範囲が広いことがわかった。また、地中性種は地中45 cm以上の深さを好むことがわかった。相生のトラップからは翅が退化したノミバエなど、佐用では見られなかった種も多数見られ、場所によって地中の種構成が大きく異なることが示唆された。


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