| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S09-3  (Presentation in Symposium)

自然資本活用型コミュニティビジネスの可能性と課題
Possibility and challenges of community business utilizing natural capital

*幸福智(いであ(株))
*Satoshi Kofuku(IDEA Consultants, Inc.)

「自然資本」とは、自然環境そのものを国民の生活や企業の経営基盤を支える重要な資本の一つとして捉える概念であり、近年「生態系サービス」とともに、急速に定着しつつある概念と言える。
「地域循環共生圏」は、第五次環境基本計画の中核をなす概念として位置づけられ、「各地域がその特性を活かした強みを発揮し、地域ごとに異なる資源が循環する自立・分散型の社会を形成する」ことと、「近隣地域等と共生・対流し、より広域的なネットワークを構築し、地域資源を補完し支え合う」の2点が重要な構成要素である。これらを実現するために欠かせない地域資源の一つが地域の自然資本であり、地域循環共生圏という概念は自然資本という概念と高い親和性を有する。
環境省では、地域循環共生圏の具体的な構築手法を検討するため、2016年度に全国で10の地域を実証地域として採択し、3年間の実証事業を展開してきた。これらの成果として、大きな規模ではないものの、地域に特有の自然資本を持続可能な形で活用した認証商品が開発されるなど、新たなビジネスがいくつも生まれつつあると同時に、多くの課題が存在した。当社は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)と共同で当該業務を支援してきた。そこで、この経験を活かしながら、本会のディスカッションに向けて、主に以下の観点から話題提供を行う。
・地域循環共生圏の具現化にあたり、実証事業では実務者を中心に多くの試行錯誤がなされた。この試行錯誤の現場において、実務者は様々な有識者や先行研究にヒントや根拠を求めたが、そこにはどのようなギャップがあったか。
・一部の実証事業では、研究者が実務に関わりながら、新しいコミュニティビジネス作りに取り組んでいる例も複数見られた。研究者が個別具体のプロジェクトに関わることの意味と課題は何か。
・地域循環共生圏に関わらず、研究者が思考し提案する概念や政策の実現には何が必要なのか。


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